彼は知らぬ間に求められる
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対する気持ちに気付いてるんじゃないだろうか。それに星さん自身も――
「せ、星さん。少しお聞きしたい事が――」
「ふふ、秋斗殿。雛里のご所望は私のようだ。残念でしたなぁ」
私の言葉を聞いてすぐにクスクスと笑いながら秋斗さんに言う。
そんなつもりで言ったんじゃないのに。どういうつもりですか。
「……マジか。俺、こんな時どんな顔したらいいかわからないんだが」
秋斗さんががっくりと項垂れた。ああ、どうしてこんな事に。
「笑えば、いいのでは? 安心しなされ、少し話をした後、雛里はちゃんと劉備軍にお送り致します故。女子の内緒話をどうしても聞きたいというのでしたら止めませんが」
「……まあ女の子同士の話に男はいらんわな。陣への送りは任せたぞ。雛里、俺は少し田豊と張コウに会ってくる」
そう言ってすぐに秋斗さんは袁紹軍の陣のほうへ向かってしまった。
二人でいってらっしゃいと見送り、星さんの様子を伺うと名残惜しそうに秋斗さんのほうを見ていた。星さんは秋斗さんの背中が見えなくなってから話はじめた。
「……雛里よ。話とはあの鈍感男のことであろう?」
やっぱりこの人は鋭い。
「……そうです。もしかして星さんは秋斗さんのことが――」
「クク、あのような無自覚女たらしのどこがいいのか」
苦笑しながらの酷い言い草にむっとして反論しようとしたが星さんは話し続ける。
「しかし惚れたもの負けとはよく言ったものでな。どうやら私も秋斗殿の術中に嵌ってしまったらしい。おお、どこかの軍師殿と同じようだ」
素直に認めればいいのにわざと回りくどく言うあたりこの人らしい。
「なに、私は今の関係も気に入っているのでしばらくは何かを起こすつもりはない」
私と同じ。でもいつかは行動を起こすということ。
「……星さんには負けません」
「それはこちらも同じ事。雛里は手ごわい好敵手だが……私が譲るとでも?」
星さんは手強い。すでに心許せる友の関係になっているのだから。星さんといる時はいつも楽しそうで、少し嫉妬の気持ちが胸に湧く。
「しかしあの男のほうが手ごわいか。お互い大変な相手を想ってしまったものだな雛里よ」
そう言って私に笑いかけてくれる。この人も優しい人。
共に競い合って、結果がどうであれ恨みっこは無しだと言外に伝えてくれているんだ。
「ふふ、本当ですね。結局はあの人のお心次第ですから」
「違いない。さあ、疑問も解けただろう? 陣まで送ろうか」
「ありがとうございます。少しゆっくり歩きませんか? 星さんには秋斗さんがどう見えているのか教えてほしいです」
「ほう、それは素晴らしい案だ。黒麒麟殿の心の城壁を突破するための情報交換というわけか」
「私もある程度はお教えしますので」
「さすがは軍師。ではどこから話そうか」
ゆっくりと二
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