幕間:仁ノ助、酒乱と太刀を交える事
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互いに息が整ったのを悟った後、再び武を争わんと駆け出さんとする。その瞬間、間を割って入るように疾風のように二つの人影が飛び込んだ。一つは仁ノ助の大剣に蛮刀を絡ませて地面に下ろし、もう一つは戟を振るって蒋済の行く手を阻んで後退せしめた。
仁ノ助は微苦笑を漏らしながら乱入者、曹仁と曹洪をみやる。曹仁は蒋済から視線を離さずに言う。
「動くなよ。どちらともな」
「・・・曹仁、曹洪。無粋な真似をしてくれるな」
「私も武将ですから、戦いに命をかける気持ちは理解出来ます。ですが、私の意思ではどうにもならぬところから、命令が飛んできたものでして」
「・・・なるほどね。で、どちらにいるんだ?」
曹洪がゆっくりと離れながら、首をくいっとやった。仁ノ助が武器の構えを解きながら振り向くと、黒い駿馬に跨った曹操が彼を見下ろしていた。曹操は鷹揚に始める。
「賊軍討伐の道中、あなたがやるべき事は酒臭い武芸者との張り合いなのかしら、仁ノ助?己のなすべき事を弁えない者は兵を纏める将足り得ない。そう言わなかった?」
「存じております。で、あるからこそ、私は己の為すべき事をしたのです。恐縮ではありますが、華琳様に代わって、この男の才覚を斟酌致しました」
「ほう、才覚を?それで、あなたからには彼がどう見えたのかしら?」
「実に見事な武技の持ち主です。漢室の雑兵など相手になりませんよ。酒が入ったせいで気が大きくなっているのか、堂に入った態度も面白い。たとえ帝に相対した時であっても、こいつなら物怖じせずに己の意見を言えるでしょう」
「酒なしでも?」「それは・・・本人次第ですね」
ふむと呟きながら、曹操はゆっくりと馬を進めて仁ノ助より前に出る。その威風に感じるものがあったのか、蒋済はこれまでの武骨な様を覆すかのように武器を下ろして膝をついた。曹操は問う。
「あなた、名は?」「名は蒋済、字を子通と申します。 徐州彭城郡より、天下に武を敷くに相応しき御仁を探し、ここまで旅して参りました」
「蒋済。あなたは天が真に望むものを知っているわ。天下に覇道を敷き、平穏を齎す。それこそがこの曹孟徳の望むもの。あなたの全てを私に委ねなさい。その才覚、無味乾燥の荒野に埋もれさせるには惜しい。私ならばそれを誰よりもうまく使えるわ」
「・・・あなたが、あの曹孟徳様でしたか。波才を撃破った乾坤一擲の火を煽り、数万もの賊を討ち果たしたという・・・」
蒋済は初めから答えなど決まっていたかのように頭の前に拳を合わせ、最敬礼をもって彼女の言葉に応えた。
「蒋子通。これより、曹操様と共にあります!我が武と心胆、どうぞ御随意に!」
「うむ。期待しているわ。・・・それと仁ノ助」
「はっ」「水を浴びてきなさい。気付いていた?彼の酒気があなたに移っているわよ?そんな身体
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