幕間:仁ノ助、酒乱と太刀を交える事
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西華にて朱儁と別れた皇甫嵩以下、道中近隣の村や町から寡兵を募って少なからぬ兵を獲得する事ができた官軍は、およそ二万数千もの規模にまで膨れ、一路北東へと進軍していた。エン州は陳留を通過しながら、東郡東阿県へと向かっていったのだ。ここにも黄巾党の一軍がおり、村々を略奪して回っているとの報告があったからだ。
だが皇甫嵩は思わぬ展開に面喰って、足を止めざる状況に陥っていた。確かに黄巾党の一軍自体は存在しており、遭遇戦ような形で撃破、指揮官を斬首してその麾下にある賊兵数千を同じ道へと追い立てた。おかしな事はその後で、県を治める県丞の下へ訪ねていったら、別の人物が県丞となっていたのだ。曰く、前の県丞は街を略奪したため、やむを得ず放逐した。さらに曰く、兵が少なく治安維持が困難なため手を貸してほしい。こんな理由により官軍は東阿県にて足を止めていたのである。
これにはさすがに曹操も立腹していたが、皇甫嵩が『二日で済ます』といったため不満を呑み込んで、軍に一時の休憩を取らせるよう伝達した。かくして仁ノ助も身体を休めんとしたのだが、曹洪からのひょんな報せによりむくりと身体を起こしていた。
「はぁ?面接希望?」
「ええ。がたいの良い荒くれ者が一人。なぜか皇甫嵩殿ではなく、我々の軍に押しかけてきたんです。曹操殿に合わせてくれとかなんとかで喚いているそうで・・・それに匂いが凄いらしいです」
「匂いって?」「かなり酒を飲んだ状態で現れたそうなので。見張りの兵がその男を取り押さえて、今は離れた所にいるのですが、『曹操殿に会わせろ』との一点張りで」
そういう彼の顔はいつもよりも疲れたように見えた。散々男の相手をした後のようであった。
仁ノ助は唸りながら寝台に倒れこみ、考えを巡らせるふりをする。その答えは割と早くに出たようで、彼はぱっと寝台から起き上がって武具一式を装備し始めた。
「会ってみよう。仮にも官軍を前にして、酔っ払いながら門戸を叩いてくるやつだ。かなり根性が座っているのは確かだろう」
「ですが危険ですよ?抑えられる際に暴れて、地面を二寸ほど蹴り穿ったのを見ました。かなりの力の持ち主です。何かしでかしたらあなたの身に危険が・・・」
「俺の嫁かよ、曹洪?そいつと試しに会ってみるだけで、大した器じゃ無かったらここからすぐに追い返すって。それか剣の錆にする。それにな、酒飲みの荒くれ者相手なんて曹操様に仕える前に沢山相手にしてきた。余裕過ぎて欠伸が出るね」
「油断したら死にそうな顔をしているのに?」
「お前、次馬鹿な事を言ったら、夜な夜な死にたくなるような恥ずかしい詩を書いているのをバラすからな。お前がご執心の輜重部隊のあの子に」
目を割らんばかりに開いた曹洪の必死の抵抗を振り切って、仁ノ助はそそくさと男が待たされているという
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