第聖夜話
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物が貰えるとは思っていなかった里香は、先程まで泣き出すほど落ち込んでいた自分が一番のバカだったと苦笑する。幸運にも今の独り言は翔希には聞こえなかったようで、怪訝な表情をしてこちらの顔を覗き込んでくる。
「どうした?」
「……ううん、なんでもない! それよりどうしようかしら……あたし、今日のパーティー用のしか……」
「お返しなんていらないぞ、里香」
翔希ならばそう言うだろうとは思ったが、里香からしてみればそれでは納得がいかない。何か渡せるものがあれば良いが、あいにく今持っているお金は買い出し用のお金しかない。
「なんなら、アインクラッドでの鍛冶代だと考えて欲しい。……買い出しは終わったのか?」
もう翔希にはお返しを受け取る気は無いようで、机の上にある伝票を持ってレジの方へと歩いていく。里香は慌ててそれを追うと、翔希の横に並んだ。
「ああいや、まだだけど……」
「じゃあ行こうぜ。ま、荷物持ちぐらいならやるからさ」
早々とコーヒーの生産を済まし、数十分いた喫茶店を後にする。……入るときと出るときの気持ちが正反対とは、現金だと里香は本人ながらそう思う。
「……良し!」
心機一転、気持ちを入れ換えるために里香は自分の髪に付いていた髪留めを外し、貰った紙袋から取り出した髪留めを取り付ける。新品故の心地良い違和感と、鏡を見ながらではないため変になっているだろうが、構わずそのままにした。
「……似合ってるな」
「従姉さんのおかげかしら?」
「……勘弁してくれ……」
これは良いからかうネタが出来た、と思いながらも買い出しをすべく、二人で商店街を練り歩く。……里香が、今の状況こそ自分が思っていた『買い出し兼クリスマスプチデート』だと気づくのは、もう少し後の話になるが。
「なあリズ。そんなにお返し考えるなら、パーティーでやる交換用の物、俺に来るように祈ってたらどうだ?」
一次会でやる予定のプレゼント交換会用に、全員それぞれプレゼントを用意してきてはいる。だがその翔希の提案を、里香は考えるまでもなく却下した。
「こういうのは、自分で『あの人にあげるんだ』って考えながら選ばなきゃダメなの!」
自分にも思い当たる節があったのか、少し頷いた翔希。また、あの従姉に押し切られた奴はそのプレゼントの法則に当てはまるのだろうか、という危惧もあったものの。
「……プレゼント交換、里香は何を出したんだ?」
「えっ……!? ひ、秘密よ秘密! そういうのは内緒にしとくもんでしょ?」
もちろん、翔希もそんな事は分かっていて聞いている。案外あっさりと口を滑らすかと思ったが故の発言だったが、秘密というルール以前に、恥ずかしくて言えないというのが本音だった
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