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SAO−銀ノ月−
第聖夜話
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いた。自分に向けてか彼に向けてか誰に向けてかは知らないが、バカ、と呟きながら。

「バカ……翔希の、バカ……」



「誰がバカだ、誰が」



 突如として背後から響いた声に振り向く里香だったが、自分の背後には誰もいない。それもその筈だ、その声の主である一条翔希はもう里香の前に行き、早々とコーヒーの注文を済ましていた。

「……それで、何で俺はいきなりバカって呼ばわりされたんだ?」

「ちょ、え、ショ、翔希……?」

 店員が持って来たコーヒーを一口飲むと、慌てる里香の目の前に指を一本出した。すっかり俺もコーヒー派になったな、などとぼやきながら。

「シリカから電話貰ったんだ。……尾けてたらしいじゃないか」

「えーっとぉ……」

 何をやっているんだと珪子を探すものの、辺りを見回しても珪子の姿はどこにもない。そこでポケットの中に入れてある携帯が震え、慌てて携帯の画面を見ると、珪子からの『キリトさんに呼ばれたので帰ります、買い出しはお願いしますね』という旨のメールだった。

「シ〜リカぁ……!」

 いつの間にか店の外へと出ていた親友のことを恨みながら、ばつの悪そうな顔をしながら翔希に向き直る。自分と同じようにブラックコーヒーを飲む翔希の姿は、在りし日のSAOのことを思い出させる。

 会ったばかりは自分で作っていたお茶を飲んでいたのだが、気が付くと里香と同じようにブラックコーヒーを飲んでいた。いつから変わったのかは思い出せないけれど、むしろ思い出せないぐらいだということが、彼と日常を過ごしてきたのだという証明だ。

「その……悪かったわね、デートの邪魔しちゃって」

「……シリカから聞いたけどな。そもそもそっから間違いだって」

「へ?」

 翔希が呆れた顔をしながら口を開くと、シリカにも電話で話したことを訥々と語りだした。

「そのポニーテールは従姉でさ……たまに来るんだけど、剣道も剣術も俺より強いから、全然頭が上がらなくてな。昔から…………」

 台詞が終わるにつれてどんどん翔希の言葉尻が下がっていき、そのまま俯いていってしまう。何か聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。

「え、えっーと……」

「……ああ、悪い……だからあんな従姉が彼女とか有り得ない! 怖気が走る!」

 今日はいつにも増して様子がおかしいと思えば……絶対に気づいてやがったなあの女――と翔希は続けていき、そのまま従姉の愚痴へと移行していった様子を見て、ついつい里香は吹き出してしまう。

「フフ……アハハハハ!」

「笑わなくても良いじゃないか……」

 そんな様子の翔希に更に里香は笑いながら、目尻に浮かんでいた涙を拭い去る。この涙は笑いすぎたから出て来た、ということにし
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