暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
青い春
陸 自分だけ
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
いや、恐らく選手としての格が違うのだろう。
これほど「出来る」のに、何故野球部にすぐ入らなかったのか。入学直後入らなかったのに、何故今になって入ってきたのか。


「わからんなぁ…」


自分も歳をとったのか?
高校生の考える事が分からんとは。

加持はため息をついた。



ーーーーーーーーーーーーー

「あのー」
「ん?」

規定の球数を打ってバッティングケージから出てきた剣崎に、慶太が声をかける。

「どうやったらあんな打球g…」
「練習だ」

慶太の言葉を最後まで聞くまでもなく、剣崎はつっけんどんに答える。剣崎との会話は誰が相手でもだいたいこんな感じである。無愛想で、とっつきにくい。筋骨隆々で背も高い剣崎に言葉を遮られ、小柄な慶太はビク、と少し怯えた。

「ん?あぁ…その、なんだ…筋トレとかだ」

こうやって周りをビビらせてる事自体は本意ではないらしく、多少は気にしてるようでもあるが、その割には話し口と他人への態度にあまり改善は見られない。

「変な人やなー」

バッティングケージの後ろに設置されたティーバッティング用のネットで打ち込みながら、藤次がつぶやく。

「中学時代は北海道の新琴似シニアの3番バッターだ。全国制覇もした事あるシニアのクリーンナップだぞ。何でこんな高校に居るんだろう」

藤次にボールをトスしていた健介は、不意にニヤニヤと笑って藤次を見た。

「ま、鈴原藤次さん、エースと四番両方陥落おめでとうございまーす」
「何やてェー!?」

藤次が血相を変えて健介に飛びかかり、その頭を締め上げる。健介は慌てて、床をバンバンと叩いてギブの意を表明する。もちろん藤次、容赦はしない。

「もー!あんた達、何やってんのー!」

光が怒声を上げて藤次の頭をはたく。
三つ巴の戦いになってきた所で多摩がポツリと

「喧嘩するほど仲がいい、ね」

その呟きは本人たちには全く聞こえていなかった。









[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ