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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
幕間2 弓月兄妹と学ぶ〈帝国〉史
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。これは〈帝国〉の東方への領土拡大期を表す。皇紀前八二年ごろから皇紀元年ごろまでだが、今でも東方諸民族と断続的に紛争が起きているな」

「こちらの進撃が止まったした理由は何ですか?」

「単純に領土に旨味がなかった事だな。この拡大期にツァルラント大陸東部の沿岸地域・主要な穀倉地帯は概ね東方辺境領に組み込まれる事になった。
ここから先は山岳地帯だったり作物の北限に限りなく近かったりと、敢えて領土とする必要性が薄い土地が多い。それに急速な領土拡大によって領内の整備が必要になった事もある」
 黒茶で唇を湿らせ、葵は講義を続ける。
「だが、この拡大によって〈帝国〉は致命的な問題を抱える事になる。
西方の諸侯領と〈帝国〉本領はまだ比較的交流があった事もありまだマシだったが、東方辺境領は約八十年程度で急速に入植を進めた事や、現地の非有力部族を取りこんでいた事もあり、現地で生まれ育った世代、〈帝国〉本土に足を踏み入れた事もなく、領土の田園と領土の防衛、拡大の為の戦争で生まれ育った世代が台頭してきた。
彼らは〈帝国〉本土への帰属意識が非常に薄く、〈帝国〉本土語を敢えて話さず、現地の言葉で話す事で結束を高めたと言われているな」

「あぁ・・・・・・・」
碧が半眼で力なく笑った。

「そして御期待通りに内乱が起きる、東西諸侯叛乱だ。
これは今話した通りに〈帝国〉において、“東方への猛撃”により新たに〈帝国〉領となった東方辺境領と<帝国>本領・西方諸侯領との対立から起こった内乱だな。
これは皇紀百十八年から皇紀百四十三年と長きに渡ったが、最終的に、ハルトラント家支配の〈聯合帝国〉は、ロッシニウス家支配の〈帝国〉にとってかわられた。
ロッシニウス家は東方辺境領から本領に出戻った貴族で、東方辺境領の過激派と西方諸侯達が互いに消耗しきったところで外交的に和解させ、彼の親族――今の副帝家だな――が実権を握った東方辺境領と〈帝国〉本領の貴族たちの支持を背景に権力を掌握する事に成功した。これが現在〈帝国〉史における最後の帝室交代となっている」

「ロッシニウス家?あれ?今の帝室はロッシナ家ですよね?」
 首を傾げた碧を兄はかるく笑いながら掌を向けて押しとどめた。
「まぁ待て、その説明は少し後だ。
この東西諸侯乱によって〈聯合帝国〉に代わる〈帝国〉建国を宣言したアレクサンドロス一世は〈帝国〉の支配権を得た際に東西諸侯乱の再発を防ぐ対策の一環として〈帝国〉全土の共通語を定めた。
これは、広大な〈帝国〉領内の複数の民族の間で使用されている主要な言語から作られた人工言語だ。
これは身分にかかわらず、〈帝国〉の全ての民に使用が義務づけられた。
碧、この意図は分かるな?」
 兄の問いかけに碧は即座に頷き、答えを述べる。
「新しく建国された〈帝国〉への
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