話数その20 知らない
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妙に上手い鼻歌を歌いながら、晋は去っていく。
彼の背中を、グレイフィアは唯無言で見つめるのみだった。
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翌朝の登校時。もうしつこい追及は無く、彼の目的である“静かに暮らす事”にまた一歩前進した筈の晋の表情は……物凄くダルそうだった。
番組を録画し忘れていたのだろうか? ビーフジャーキーを食べようとして在庫が無い事に気付いたのだろうか? オカルト研究部が約束を破ったのだろうか?
晋がダルそうな顔をしているその理由とは―――
「……そういやそうだった……“私達からの”とは言ってたが……それはこういった事だったんだな…」
「ブツブツ言っていないで行きますよ」
そう、アレからオカルト研究部の追及は止んだのだが、止んだのは追及のみであり、監視の眼はあれからずっと付いて回っているのだ。
それでも、オカルト研究部からの物は幾分か消極的になったが、生徒会からの物は過激にもなっていないが収まってもいない。
「あ〜……くそったれぇ……」
愚痴りながら、晋は駒王学園に入学した事を今更ながら後悔した。
■
―――某所―――
「この男は異常だな……フェニックス以上の不死身なんて聞いたことがない……」
グレモリーと同じ赤い髪を持った悪魔の青年が、晋が参加していたレーティング・ゲームの映像を見て、眉をひそめ顔をしかめていた。
「しかもこの戦い方は……下手をすれば一生戦えなくなるほどのトラウマを植えつけられるぞ……」
何度殺されようと復活し、予想外の行動ばかりを起こし、時にかなりの時間を掛けて敵を倒していく晋は、強大な力で敵を吹き飛ばす事が主な悪魔たちにとって、かなり異質な存在であった。
「サーゼクス・ルシファー様……やはり、あの男は捕らえるべきですか?」
「いや、様子を見よう。何が目的かは分からないが、此方から仕掛けなければ何もしないだろうから……少なくとも今はね」
「承知いたしました」
サーゼクスと呼ばれた青年は、虚空を見やり、呟く。
「……最悪の場合は……彼を封印することも考えないといけないかもな……」
その言葉は、誰にも聞かれる事無く消えて行った。
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