デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(中編)
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っちでも全然気にならないから』
『あ、はい。わかりました、あっ……くしゅ!』
夜風が急に強くなり、冷たい空気が母子の肌を撫で、アズがくしゃみをした。
『そろそろ、帰りましょう。風邪を引いちゃうわ』
『はい……』
それは、母子が自ら、暴力の中に戻らねばならないということ。重い足取りで歩きだす母子を、委員長は無言で見送るしかなかった。
* * *
<ターン4 アズサ>
闇アズ
『何をやってるんですか? あなたのターンですよ?』
脳裏に両親の記憶が駆け巡り、動けなくなっていたアズは、もう一人の自分の言葉にびくりと肩を震わせ、現実に―――否、悪夢の中に引き戻された。
闇アズ
『だめじゃないですか、手札を落とすなんて。デュエル中なんですよ?』
微笑をたたえた闇アズサが、諭すような口調で言う。
アズ
「ご、ごめんなさい……」
口をついて、謝罪の言葉が出てしまう。それがどんな意味を持つのか意識する余裕もなく、焦って手札を拾い集め、ドローフェイズへ移った。
DRAW!
・アズ 手札:3→4
エースモンスターが使えない絶望的な状況下で、何とか打開策を見つけようと思考を巡らせるアズ。だがその思考に、容赦なく闇アズサの言葉がかぶせられ、かき乱されていく。
闇アズ
『もう十年経つんですよね、この話し方になってから』
アズ
「え……?」
闇アズ
『敬語ですよ、ケ・イ・ゴ。よかったですね、お利口さんだって、お母さんに褒めてもらえたでしょう? でも、今なら分かりますよね、お母さんがあなたの敬語を聞いて、どう思っていたか。娘が、暴力夫の言いなりに作り替えられるなんて、辛かったでしょうね、情けなかったでしょうね? かわいそうで、あなたのこと見てられなかったでしょうね?』
アズ
「そんな……わたしは……ただ……」
闇アズ
『ただ、自分の身を守りたかっただけ、ですよね?』
アズ
「やめて……そ、言わないで……」
闇アズ
『敬語をうまく使えていると、お父さんにぶたれる回数が減るから。そうすれば、あなたは痛くないですよね? だから、お母さんの気持ちを無視して、踏みにじっても全然、ぜーんぜん、平気ですよね?』
アズ
「ちが……わたしは……ちが、う……」
闇アズ
『何が違うんですかぁ!?』
闇アズサの声がひときわ大きくなった。アズはその声に恐怖し、思わず目を閉じる。
闇アズ
『ねぇ、答えてくださいよ、アズ。何が違うんですか? 敬語なんかやめて、お母さんが望んでいたように、子供らしい、かわいい話し方で、お母さんを満たしてあげればよかったのに、そうしなかったのは―――』
アズ
「っ
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