デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(中編)
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が男を押さえつけにかかり―――そして幻影のごとく男の身体を突き抜けた。実体を持つ少年は、夢に対して干渉できないものらしい―――少年はそのことを予想してはいたが、それでもこの光景を前にして、冷静に見ていることはできない。
少年が拳を握りしめて男の後頭部めがけて振り下ろす。だがその拳はむなしく突き抜け、右腕のひじ部分まで男の頭に刺さった格好になった。無力を感じ、これからアズを襲う惨劇から目を背けることを考えて、それではアズの元にたどり着けないのでは、と考え直す。
『ご、ごめん……なさ……ぃ』
『声が小さい!』
大きな手がアズの頭を掴み、床に押し付ける。床に血の飛沫が飛び散った。
『謝る時は、頭を下げろぉ!』
『ぁ……! ごめ……な……さ』
うわごとのように、謝罪の言葉を繰り返すアズ。なおも男はアズの後頭部に拳を振り下ろし、振り下ろされるたびにアズの四肢が痙攣した。
幾度か殴打が続いたのち、男が肩で息をしながら、ようやくアズから手をはなす。床に転がった少女は、微動だにしない。
何が気に障ったのか、男が激昂して吼え、うつぶせのアズの脇腹めがけて蹴りを見舞う。衝撃に、童女の身体全体が、少し浮き上がるほど。続いて身体が床に落ちる鈍い音が響き、童女は転がって仰向けになる。
かろうじて意識はあるようだが、目の焦点が合わず、肋骨を突き抜けた衝撃に呼吸もままならない様子で痙攣する童女の身体。口の中を傷つけたらしく、口の端が真っ赤に染まっている。額も割れて、血が一筋、顔を両断するように伝い流れていた。よく見ると、衝撃で外れてしまった血塗れの乳歯が一本、床に転がっている。
正視にたえない虐待の光景。それでも、委員長は瞼を閉じようとする衝動を押さえつけて、眼をそらさず見続ける。その時、唐突に玄関の扉が開く音がした。
『アズ!?』
女性の声が響いた。玄関の扉へ目をやると、バッグと買い物袋を提げた女性の姿がある。
(母親……か?)
女性は荷物を投げ捨てると、畳の上に倒れているアズへ半ば半狂乱になって駆け寄り、抱き上げる。
『アズ! しっかりして! アズ!』
必死の呼びかけにも、アズは応えない。というよりも、明らかに応えられる状態ではなかった。
娘を抱えた母が、父親の脇をすり抜けて、部屋を走り出ていく。娘への愛に、母親は父親以上に狂っていた。父親ががたりとその場に崩れ落ち、泣きながら吠えていた。
* * *
闇アズ
『あの日、お母さんの言いつけを破って早く帰ってきて、めちゃめちゃにぶたれて、それでも最後はお母さんに助けられて……愛されていたのですね?』
魔剣士が攻撃態勢をとり、かつての主たる少女に向けて走り
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