デュエルペット☆ピース! 第4話「SIN」(中編)
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・闇アズサ 手札:3→4
闇アズ
『うふふ、かわいそうなアズ。苦しかったでしょう? 痛かったでしょう?……お父さんにぶたれて』
アズ
「っ……!」
闇アズ
『でもあなたは、いくらぶたれても、お父さんを嫌いになっても、憎むことはなかった。あなたが一番憎んでいたのはあなた自身……自分を庇ってくれるお母さんを助けられない……あなた自身……』
闇アズサの言葉が、アズの胸に立て続けに突き刺さる。いまやアズの全ての感情が、闇アズサの記憶と、手の中にあった。
* * *
少年が眼を開けると、そこはしなびたアパートの一室であった。夕刻らしく、窓の外から夕日が差し込み、照り返しが重なって、辺り一面が気の抜けたようなオレンジ色に染まっている。まぶしさに、思わず目を細める少年。
少年の目の前にある、四畳半の居間の隅に、男が座していた。足元には酒瓶が転がり、うつろな目で空を見つめている。委員長の存在も、目に映っていないかのようである。
少年の背後から、がちゃん、と音がして、玄関の扉が開いた。薄い扉と壁の隙間から、まだ五、六歳であろう童女が入り、扉を閉める。成長途上でありながら、つぶらな瞳に、通った鼻筋は、女性としても大きな可能性を感じさせる。毛質のためか、毛先はそろっておらずちぐはぐな方向を向いていたが、それさえ愛嬌として見られる。その少女の造作に、少年は既視感を覚えた。
(アズ……?)
今、彼が助けたいと願う少女と、眼前の童女は瓜二つであった。
「お、おい……お前、アズか?」
だが、童女は少年の声が全く聞こえていない様子で通り過ぎていく。
(ここが、夢の中だとすれば……これはアズの見た夢そのものか、あるいは……記憶?)
童女はぱたぱたと居間へ歩き、そして、居間の手前で立ち止まった。
(これがアズの記憶ならば……あの男は父親……か? だとすれば―――)
委員長の脳裏に、先ほど聞いたアズの幼少期の話がよみがえる。次に起こる事態に予測がついて、居間に目を移すと、男が酒瓶を蹴りながらぬっと立ち上がり、童女の目の前に立つのが見えた。童女―――アズへ向けて、男が手を伸ばす。後姿だけ見てもわかるほどに、アズはびくりと身体を震わせ、思わずその手を払いのけてしまう。
それが、男の逆鱗に触れた。
『なんだぁ! 父親に向かってその態度は!』
『っ……! やめて……いや!』
『言葉づかいがなってないと、教えたろうがぁ!』
振り上げられた手の先で拳が握りしめられ、そのままアズに振り下ろされた。鈍い音が鳴り響き、アズの身体が吹き飛んで、木造の柱に背中から叩きつけられる。
「おいっ! やめろ!」
たまらず委員長
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