第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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」
自分の前で頭を下げ、身体を震わせるルイズの姿を見下ろすアンリエッタは、浮かべていた笑みを更に緩める。
「無事に帰ってきてください」
「……は、い……」
ゆっくりと顔を上げたルイズの目は、その榛色の瞳がぼやけて見えなくなり、溢れ出したものが頬を流れ落ち床に染みを作り出していた。
無言で再度アンリエッタに頭を下げると、ルイズは扉に向かって歩き出して行く。
がらんとした執務室に、ルイズの足音だけが響く。
しかし、ルイズが扉を開けようと手を伸ばしと瞬間、アンリエッタの声がルイズの背中に向けられた。
「ルイズ。あなたはシロウさんが目指す『正義の味方』がどんなものか知っていますか?」
「え?」
扉に手を掛けた姿のまま、ルイズは顔だけアンリエッタに向ける。
「知っていますか?」
「それは……その、えっと……全てを救う?」
唐突過ぎる質問。
何故こんな時にこんな質問をするのか、その真意を図ることができないルイズ。
あやふやなルイズの答えに、アンリエッタは未だ笑みが浮かぶ顔で首を横に振ると再度問う。
「そんな曖昧なものではなく、もっと具体的なものです」
「具体的?」
首を傾げるルイズ。
シロウの目指す『正義の味方』……。
アンリエッタの言葉に、ルイズは先程まで浮かんでいた戸惑いの色を消し去ると、目を閉じ深く考え始め……そして気付く。
そう言えば、漠然としたものばかりで、具体的なものは聞いたことがなかったような……でも、『正義の味方』なんてものは、元々漠然としたものだし……姫さまは、何でそんなことを……?
具体的と言っても、『正義の味方』と言えば……悪人を捕まえる? 困っている人を助ける? ……それも曖昧な感じがするし……。
衛宮士郎が口にする『正義の味方』とは一体どんなものか自分が全く知らないことを。
曖昧な……漠然とした形しか知らずにいたことを。
「具体的に何をするのか、何を守りたいのか……何をもって救ったと言うのかを、です」
「それは……」
苦しげな声を漏らすルイズだが、アンリエッタの話は続く。
「『全てを救う正義の味方』……敵も味方も……その全てを救う……理想と言うよりも妄想に近いものですが……シロウさん目指しているものは……あるいは確かに『全てを救う正義の味方』と言えるのかもしれません」
「姫さまは、それを」
微笑みながら口にするアンリエッタの姿に、ルイズは目を見開くと、僅かに震える声で問いかけると、
「ええ、教えていただきました」
アンリエッタは顎を引くだけの小さな頷きをもって返した。
「そんな顔をしなくても、聞けば教えてくれると思いますよ」
アンリエ
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