第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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顔をチラリと見ると、ルイズに背中を向けた。
「友のため全てを捨てる……ですか、今のわたくしには……いえ、以前のわたくしにも無理でしょうね」
「……姫さま」
「わたくしには責任があります。この国の王としての責任が。ですから、たった一人のためにこの国を危機に陥らせるような判断は下せません」
「…………」
背中越しに話しかけてくるアンリエッタの言葉をルイズは無言で聞く。
「例えそれが大切な友人の願いでも……心を寄せている人の願いでも……です」
目を閉じたアンリエッタの瞼の裏に、様々な情景が浮かんでは消える。
「ルイズ……あなたに一つ聞きたいことがあります」
「なんでしょうか」
アンリエッタの言葉にすっと背筋を伸ばし直すルイズ。
ルイズが背筋を伸ばすのに合わせるかのように、ゆっくりと振り返ったアンリエッタは、何かを試すかのような視線でルイズを見つめる。
「あなたが彼女を助けようとするのは何故ですか?」
アンリエッタの嘘偽りは許さないと視線と態度に、ルイズは息を大きく吸うと、ハッキリとした声で応えた。
「それがわたしの通すべき『筋』だからです」
「通すべき……『筋』?」
予想外の言葉だったのだろう。アンリエッタの顔に困惑の色が浮かぶ。
「はい。『筋』です」
こくりと頷いたルイズは、困惑の色が薄れないアンリエッタに対し口を開く。
「わたしが、わたしであるために必要なのです」
「そのためだけに、あなたは捨てると言うのですか」
睨み付けるようなアンリエッタの鋭い目とルイズの目が合う。
怯むことなく、ルイズは一つ頷くと口を開く。
「はい」
ハッキリと応えたルイズを前に、アンリエッタは釣り上げていた目の尻を下げると、頬に手を当て困ったように溜め息を吐いた。
「ふぅ……全く……ルイズにシロウさんが似たのか……シロウさんにルイズが似たのか……」
「姫さま?」
急に雰囲気が柔らかくなったアンリエッタの姿に、困惑の声を上げるルイズ。そんなルイズにアンリエッタは笑いかけると、先程渡されたマントを胸元に抱きしめた。
「……このマントは確かに預かりました。ですが、わたくしには他にも仕事がありますので、できるだけ早く取りに帰ってきてください」
「っ! 姫さまっ、それは―――」
「ルイズ」
ハッと顔を上げ何かを言おうと口を開いたルイズを遮るように、アンリエッタはルイズを呼ぶ。
「それがわたくしの『筋』です」
「―――っ」
自分のマントを胸に抱き、優しく微笑むアンリエッタの姿を前に、ルイズは開きそうになる口を必死に歯を食いしばることで耐えると、震える身体で小さく頭を下げた。
「わかり、ました
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