第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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た士郎の背中を押すと、強制的にドアの外へと連れ出していく。
パタンと乾いた音が部屋の中に響き、静寂が満ちる。
ギシリと微かな椅子が軋む音を響かせ静かに立ち上がったルイズは歩き出し、先程まで士郎が座っていた椅子の後ろに立つと、背もたれに手を掛け目線を下げた。そしてまるでそこに士郎がいるかのように目を細めると頬を微かに膨らませた。
「何が『今は動けない』よ。こういう時のあなたのそんな言葉が信用できると思ってるのかしら?」
頬に貯めた空気を吐き出すかのように、重く低い声で文句を口にしたルイズは、士郎の頭を叩くように背もたれを叩くと、ドアに向かって歩き出した。
その顔には、何処か困ったような、しかし何かを吹っ切ったかのような晴れやかな表情が浮かんでいた。ドアの前で一度立ち止まったルイズは、片手を上げぐいっと背筋を伸ばし、「よしっ!」と小さく、しかし勢いよく口の中で呟くと一気にドアを開く。
「全く、使い魔が勝手な行動を取るんじゃないわよっ」
不満も露わに文句を口にしながらも、何処か嬉し気に外へと出て行くルイズ。
ドアが閉まり、沈黙が部屋を満たす。
何も動かず、何の音もしない。
ただ沈黙だけがある世界。
ただ……時間だけが過ぎる。
そんな時、唐突にドアが開かれ沈黙が壊された。
静寂の世界を壊した人物は、柔らかな敷物の上をスタスタと歩いていくと部屋に設置されたテーブルの近くでピタリと足を止めると腰をかがめ、
「……忘れてた」
と、ポツリと呟き仰向けに転がっていた青髪の女性をむんずと掴み肩に荷物のように担ぎ上げ、ドアに向かって真っ直ぐに歩いていくと、そのまま無言でドアを開け部屋を出て行った。
そして今度こそやっと部屋に本当の静寂が戻ってきた。
アンリエッタは一番の友人―――親友とも言ってもいい少女を前に、諦めたかのように溜め息を吐くと顔を俯かせた。
「―――ルイズ、あなたは今自分が言ったことの意味をキチンと理解していますか?」
「はい」
重々しく問いかけたつもりの声は、思ったよりも小さく、震えていた。
それを心の何処かで威厳が足りませんねと小さく苦笑しながらアンリエッタはゆっくりと顔を上げ臣下であり、友人であり、幼馴染でもあるルイズを見る。
貴族にとって死に等しい宣告をたった二言で頷いてみせたルイズ。
真っ直ぐに、強い意思と覚悟に満ちた榛色の目を前にして、アンリエッタは厳しく引き締めていた顔の口元を僅かに緩ませた。
「……羨ましいですね」
「え?」
アンリエッタが口の中で小さく呟いた声が聞こえたのか、ルイズは緊張で強ばらせていた顔を驚きに染めると小さく戸惑いの声を上げた。
アンリエッタはそんなルイズの
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