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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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、椅子に座る赤い髪の女性―――キュルケの言葉にその隣に座るピンク色の髪の女性―――ルイズは床に転がる青髪の女性に視線を一つも向けることなく小さく頷いた。

「で、シロウはどうするつもりなの?」

 テーブルに置いた空のカップの縁を指先でなぞりながら、キュルケは覗き込むように士郎を見る。

「下手をすれば戦争になる可能性もあるからな。時間はかかるだろうが外交で何とかするしかないだろう」
「外交でなんとかなる問題なの?」

 腕を組みむっつりとした顔でポツリと呟いた士郎の言葉に、ルイズは椅子の背もたれに身体を預けながら問いかける。
 
「留学生とはいえタバサはトリステイン魔法学院の生徒だしな、先の誘拐事件に深く関わっていることである程度話し合えるだけの材料は揃っている……無理ではないだろう」
「それは可能性がゼロじゃないってだけで、事実上は無理な話でしょ……なら、シロウはタバサのことを諦めるってこと?」
「……今は動けない」
「ふ、ん……そう」

 顔を下に向けた士郎をチラリと一瞥したキュルケは、隣りで睨みつけるように士郎を見るルイズを横目で見る。探るような目でルイズは士郎を見ているが、士郎は顔を伏せているためにどんな顔をしているか見えないのだろう。ルイズの眉間に皺が寄っている。明らかに機嫌が悪い。

「そう……ね。確かに戦争になる可能性を考えればタバサを助けに行くことは考えられないわね」

 士郎の顔を伺うことが失敗に終わったのだろう。明らかに不機嫌な様子でルイズは椅子に座り直すと、ゆっくりな動作でテーブルの上に手を置いた。人差し指の指先で硬いテーブルの上を叩き、「コンコン」という硬質な音を立てながら、ルイズは先程のお返しとばかりに士郎に対しそっぽを向く。

「時間を無駄にしたわね。一旦学院に戻りましょう。外交にわたしたちみたいな一介の学生が関われる理由がないし。他に方法がないか調べてみなくちゃ」
「そうだな。俺も他に方法がないか調べてみよう」

 キュルケが椅子から立ち上がると、士郎もそれに続く。そのまま二人はドアまで歩いていくが、ドアの直前で同時に部屋を振り返った。

「ルイズ? 帰らないの?」

 キュルケが未だ椅子に座り、テーブルの上に置かれた空になったカップを指先でつついているルイズを見る。キュルケに声を掛けられたルイズは、カップをつついていた手を止めると、ゆっくりとした動作で天井を仰いだ。

「ちょっと用事があるのよ。先に帰ってて……夜には戻るから」
「……そう、わかったわ。竜籠の用意をお願いしとくから、それで帰ってきなさい」
「ん、ありがと」

 目を細め真剣な顔で天井を見上げるルイズ。一度も顔を向けなかったルイズに文句を言うことなく、キュルケは何かを言おうと口を開こうとしてい
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