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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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 どうだったのね?! お姫さまいいって言ったのね!?」
「落ち着け、部屋に入れない」
 
 ドアノブに手を掛けた姿のまま士郎は自分の身体にまとわりつきながら「きゅいきゅい」と喚きたてる青髪の女性の首根っこを片手で掴見上げると床に放り投げた。ドスンとお尻から落ちた青髪の女性であったが、直ぐに立ち上がるとパタパタと再度駆け寄ってくる。まとわりついてくる青髪の女性を片手であしらいながら、士郎は部屋の中へと進むとテーブルを囲むように椅子に座る二人の女性の前まで歩いていく。

「きゅいきゅいきゅいっ! いいから早く教えるのねっ」

 椅子に座る二人の女性は、手に持っていたカップをテーブルの上に置くと、一度士郎にすがりつく青髪の女性に視線を向けた後、すっと目を細めそれぞれ口を開いた。

「……で、結果はどうだったのシロウ? 女王陛下の許可は取れたのかしら?」
「……姫さまは何て?」

 士郎は二人の問いかけに目を細めると、小さく首を振り空いた椅子の上に座った。

「残念ながら、許可は出なかった」
「きゅきゅいっ! 出なかったってそれってどう言うことなのね! 早く助けに行かないと大変なことになるのねっ! 何すごすご帰ってきてるのねっ! もう一度行ってくるのねっ! きゅいきゅいきゅいきゅいッ!! 早く早くっ!! きゅいきゅ―――っぎゅ」

 椅子に座った士郎の耳に顔を近づけ大声を上げる青髪の女性。士郎はテーブルの上に置かれたクッキーを鷲掴みすると、それを青髪の女性が大きく開けた口の中に押し込んだ。突然口の中に握り拳大のクッキーの塊を押し込まれた青髪の女性は、目を白黒させると士郎に文句を言おうとしたのだろうか? 息を吸おうと開ききった口を更に開けようとした瞬間、口の中に詰まっていたクッキーの塊が喉に落ちたのだろう、突然喉を両手で抑えると床に倒れてしまった。青髪の女性は喉を両手で押さえながらふかふかのカーペットが敷かれた床の上をごろごろと転がったかと思うと、ピタリと動きを停めて死に掛けの虫のように手足をピクピクと震わせる。天井を見上げピクリとも動かなくなった青髪の女性の顔色は、その髪色のよう真っ青であった。

「許可は出なかった……か、ま、当たり前よね。ガリアという大国に拘束されているたった一人を、しかもトリステインとは全く関係のない人を捜し出すことを許可するとは元々思えなかったし。それにシロウは今ではトリステイン騎士、しかも女王陛下の近衛隊。そんな人物が他国で犯罪者として扱われている者を助けようとしているのがバレたら下手すれば、いえ、確実に外交問題になるでしょうしね。許可が出るほうがおかしいのよ」
「……ま、最初から分かっていたことよね」

 絨毯の上に突っ伏したままピクリとも動かなくなった青髪の女性にチラリとも視線を向けることなく
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