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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
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から」
「いや、そん―――」

 戸惑うような士郎の声に被せるように、アンリエッタはニッコリと笑う。アンリエッタの顔に浮かぶ笑顔を見た瞬間、士郎の喉がゴクリと動く。士郎はアンリエッタの顔に浮かぶ笑顔を幸か不幸―――不幸にも良く知っていた。どんな時に浮かぶものなのか、どのような意味を持つものなのか……をだ。

 どんな時? ―――怒っている時。

 どのような意味? ―――黙れ、これ以上喋るな。

 時と状況によってその内容は変わることもあるが、現状からかんがみるに、今回はこれで間違いはないだろうと、士郎は脳裏で一瞬で結論に至る。
 そして今までの経験から反射的に口を閉じ背筋を伸ばす。
 既に条件反射の域にまでたどり着いてしまっているのは、士郎のせいなのか、それとも士郎の周りにいた女性のせいなのかは……分からない。

「あなたの取った行動(タバサ救出)によりガリアと戦争が起きるかもしれませんよ? それでも行きますか?」
「タバサは助ける。戦争は起こさせない」

 アンリエッタは目を丸くする。
 
 ……全く……あなたと言う人は……。 

 ふっ、と口元だけの小さな笑みを浮かべるアンリエッタ。
 チラリと視線を横に動かしたところで、自分を見る士郎の目に更に強い意志の光を感じたアンリエッタは、反射的に顔に浮かんだ表情を士郎から隠すように小さく俯くと、気持ちを切り替えるように息を吐いた。
 それはため息でも安堵の吐息でもなく……苦笑から漏れた吐息であった。
 
 全く、行く気満々じゃないですか。
 何を言っても、止まるような人じゃありませんし。
 それに……止めたくても、わたくしには止める方法がありません。
 やはり……わたくしは……ただ待っているしかないのですか……。
 シロウさん。
 ……あなたが彼女を助けようとするのは、やはり『正義の味方』に憧れているからですか?
 囚われた仲間を救うため、大国を相手にたった一人で戦いを挑む……。
 普通に考えれば絶対に不可能な話……でも、あなたなら……もしかしてと思ってしまう。
 わたくしの時のように……アルビオンでの撤退戦の時のように……自分を犠牲にして…………。
 ……正義の味方……ですか。
 何故……ですか。
 あなたは……何故そこまでして……。
 
 ……ぁ。

 ……そう言えば、あなたは―――
 
「……一つだけ……聞いてもよろしいですか?」

 俯いたまま、アンリエッタは士郎に問いかける。
 
「何が聞きたいんだ?」

 士郎が眉を僅かに下げながら首を少し動かす。

「あなたの目指す『正義の味方』とは、一体どんな『正義の味方』なんですか?」
「ん?」

 コテリと士郎の首が傾く。
 そんな士郎の姿に、しかし
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