第十章 イーヴァルディの勇者
第四話 決断
[2/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
から」
「いや、そん―――」
戸惑うような士郎の声に被せるように、アンリエッタはニッコリと笑う。アンリエッタの顔に浮かぶ笑顔を見た瞬間、士郎の喉がゴクリと動く。士郎はアンリエッタの顔に浮かぶ笑顔を幸か不幸―――不幸にも良く知っていた。どんな時に浮かぶものなのか、どのような意味を持つものなのか……をだ。
どんな時? ―――怒っている時。
どのような意味? ―――黙れ、これ以上喋るな。
時と状況によってその内容は変わることもあるが、現状からかんがみるに、今回はこれで間違いはないだろうと、士郎は脳裏で一瞬で結論に至る。
そして今までの経験から反射的に口を閉じ背筋を伸ばす。
既に条件反射の域にまでたどり着いてしまっているのは、士郎のせいなのか、それとも士郎の周りにいた女性のせいなのかは……分からない。
「あなたの取った行動によりガリアと戦争が起きるかもしれませんよ? それでも行きますか?」
「タバサは助ける。戦争は起こさせない」
アンリエッタは目を丸くする。
……全く……あなたと言う人は……。
ふっ、と口元だけの小さな笑みを浮かべるアンリエッタ。
チラリと視線を横に動かしたところで、自分を見る士郎の目に更に強い意志の光を感じたアンリエッタは、反射的に顔に浮かんだ表情を士郎から隠すように小さく俯くと、気持ちを切り替えるように息を吐いた。
それはため息でも安堵の吐息でもなく……苦笑から漏れた吐息であった。
全く、行く気満々じゃないですか。
何を言っても、止まるような人じゃありませんし。
それに……止めたくても、わたくしには止める方法がありません。
やはり……わたくしは……ただ待っているしかないのですか……。
シロウさん。
……あなたが彼女を助けようとするのは、やはり『正義の味方』に憧れているからですか?
囚われた仲間を救うため、大国を相手にたった一人で戦いを挑む……。
普通に考えれば絶対に不可能な話……でも、あなたなら……もしかしてと思ってしまう。
わたくしの時のように……アルビオンでの撤退戦の時のように……自分を犠牲にして…………。
……正義の味方……ですか。
何故……ですか。
あなたは……何故そこまでして……。
……ぁ。
……そう言えば、あなたは―――
「……一つだけ……聞いてもよろしいですか?」
俯いたまま、アンリエッタは士郎に問いかける。
「何が聞きたいんだ?」
士郎が眉を僅かに下げながら首を少し動かす。
「あなたの目指す『正義の味方』とは、一体どんな『正義の味方』なんですか?」
「ん?」
コテリと士郎の首が傾く。
そんな士郎の姿に、しかし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ