デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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きていた。
なぜそんな下らない我慢をしていたのか、今となってはまったく理解できない。文字通り、手の届くところに瑞々しい肉体があるのに、なぜ手を伸ばさないのか。言い換えれば、なぜベストを尽くさないのか、ということになろう。初めて花園に触れたのはひと月ほど前だったが、それからは欲望の赴くままに、毎朝指を躍らせていた。彼の手が触れた肉体はまさに物質となり、抵抗の意思の欠片も見せなくなる。それは幸運なのか、あるいはあの輝くカードの超常の力か。
そして三日前、途中で満足して対象の臀部から手を放した。その途端、肉体から人間に戻った女は、彼の隣に立っていた気の弱そうな若いサラリーマンの腕をつかみあげて叫んだ。
――――この人、痴漢です!
女と腕をつかまれたサラリーマンは、次の駅で降りて行った。女に腕を掴まれた時の若造の驚いた顔といったら、今思いだしても笑いがこみあげてくる。
『くっくっ……あっひゃぁははは』
思い出し笑いに思わず声が出てしまう。同時に、彼にとって、欲望を満たすその行為に歯止めをかけずとも、リスクなど初めから存在していなかったのだと、確信がうまれた。言い知れぬ昂揚感に湧き踊る欲望を抱えた彼の前に、今朝、天使が舞い降りた。あどけなさの残る可憐な容姿は、まさに天使。その天使が今、翼をもがれ、彼の下で横たわっている。しわくちゃになった少女のスカートに目を止める。今朝、電車の中では、花園の入り口までしか到達できなかった。花園を蹴散らかす心境とは、まさにこのことか。ベストを尽くす、もとい手を伸ばそうとした瞬間―――。
―――がしゃぁぁぁぁん!
教務準備室の窓ガラスが粉々に割れ、手のひらサイズの白獅子が飛び込んでくる!
『そこまでだ! デュエルピース!』
涼しげかつ凛々しい青年の声で、白獅子グラナイトが吠える。そしてその声がアズの鼓膜を振るわせた瞬間、半濁していた彼女の意識を一気に覚醒させた。口腔内にまとわりつく布きれにも構わず、あらんかぎりの声を張り上げる。
「ふぁいろぉっ!」
『アズ!? 大丈夫か! 今助ける!』
言うや否や、白獅子は小さな体を器用に捻り、棚から棚へ飛びまわる。
『ぬぅ……なんだこの妙な生き物はァ……!』
視界を縦横無尽に飛び回る白獅子に、男は翻弄される。ぐぅぁぁ、と男が吠えた瞬間、脳天から獅子が急降下し、男の顔面に蹴りを見舞った。体重の軽い獅子の一撃ではあったが、脚爪の先端が男のほお肉を切り裂き、血しぶいた。
『ぎゃぁっ!』
たまらず男が顔を抑えてうめく。それを好機と、アズは男の下から這い出して、当身を喰らわせる。バランスを崩して、男は床に転がった。
『アズ、こっちだ! 外へ出るんだ!』
ナイトは割れた窓を全開にして、アズを促し
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