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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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と詰めこまれている。部屋の中央にあるソファの前で、ようやく教諭はアズの袖から手を離し、座らせた。教諭も対面に腰かけ、両手を組む。両の薬指にそれぞれ嵌められた指輪が、きらりと光った。

「小鳥遊アズサさん、だね。私はファースト・プラム担任の衛士(えじ)です。さっそくですが……」
「あ、あのっ!」

 アズは一気に説明してしまうことにした。いちいち少しずつ掘り返されるよりも、自分であらすじを述べてしまった方が、昨日から今日までの経緯の中の、要らぬことを想起して苦悩することも少なかろうという判断だった。

「申し訳ありません、昨日は朝その……しょ、しょう、傷害事件に巻き込まれまして、わたし自身は幸いにして被害にあわなかったのですが、犯人の目撃といいますか、参考人? とにかくそういう立場になってしまいまして、それで警察のほうで取り調べや調書作成に協力しておりまして、その各種手続きに思いのほか時間がかかり、すべて終わりましたところもう夜9時を回っていまして、仕方なくそのまま帰途についたという次第で、もう夜中でしたので学校の方へご一報差し上げるわけにもいかずですね、しかたなく今日の朝早めに出て、説明申し上げようと思っていたのですが……その……ね、寝坊しましたごめんなさいっ!」

 あまり思い出したくない電車内でのことは触れず、自分の過失ということにして、一気に言い切って同時に頭を深々と下げる。これで、ひとまず余計なことは問われず、自分の不手際を追及されるだけで済むだろうと予想していた。それだけに、彼女の頭上から衛士教諭が投げかけた次の一言に、アズは耳を疑うこととなった。

「いや、どうでもいいんですよ、そんなことは」

 思わず頭を上げ、目の前の教諭の顔を確認する。柔和な印象の、どこにでもいる中年男性の顔に相違なかった。

「は……えっと、え?」
「だから、どうでも構わないんです。そんなことより、私は続きをしたい」
「続きって……なんの続きです?」
「だから、朝の続きですよ」

 アズの眼が見開かれる。朝の出来事―――知っているのは、あの満員電車の中にいた酢飯の一粒、しかも彼女に近接していた人間である。第一に考えられるのは―――

「まさか……先生」

 衛士教諭の表情が途端に狂気を帯び、口元がいびつに歪んだ。そのさまが、アズの脳裏に焼き付いている、朝のホームで列車のドアが閉まる際に見た、雄の歪んだ笑みと、ぴったり重なる。

「とてもよかったですよ、あなたの触り心地は、まあ素肌限定ですけどね、下着の方はまあ、安い感触でしたよ、だからあなた、もう少し色気を持たないといけませんね、肌着には気を使わないと、お年頃ですからね、そこらへんで買った安物で済ましていては、いざというときに後悔しますよォ、ホント、まあでも肌の方はよかっ
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