デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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いかないのだと言い聞かせて、扉を開ける。
「あのぉ……失礼します」
授業の進行を千切って、扉を開けて現れた少女に、教室にある三十余対の瞳が、一斉に向けられた。それら視線の中でひときわ高い位置にあるのが、授業進行中の教団の上の中年の男性教師のそれ。チョークを片手にしているとはいえ、スーツ姿が目に入り、横隔膜が引きつるような感覚に襲われる。
「あなたは……もしかして転校生の?」
「……は、はいっ」
男性教諭の言葉が、自分に向けられたものと理解するのに一瞬の間を要したが、何とか応答することができた。
「わかった。少し話があるから、今日はここまでにして、残り時間は自習にします」
男性教諭は、チョークを置き、教卓の上の教科書を閉じて小脇に抱えると、アズへ歩み寄り、彼女の手首をつかむ。それほど強い力で握られたわけではなく、それもブレザーの袖の上からであったが、異性の接触に、アズの全身に怖気が走り、あやうくその手を振り払ってしまいそうになる。男性教諭は後ろ手に教室の戸を閉めた。途端に、教室内からがやがやとざわめきが聞こえてくる。
「さ、あなたはちょっと来なさい。色々と、きいておかなければならないことがあるからね」
「あっ……は、はい……」
腕を引かれるまま、男性教諭の後をついて歩くしかなかった。
* * *
ファースト・プラムの教室内では、昨日の無断欠席に続いて、ほんの一瞬しか姿を見せなかった転校生の少女について、様々な憶測が飛び交っていた。
曰く、初日からバックレるとはいかなる不良かと思っていたところ、意外と身なりは普通であった、と。
曰く、不良どころか、容姿は清純派路線のしっとり系だったではないか、と。
曰く、お前一瞬でよくそこまで判別できたな、と。
曰く、だって女の子だったし、チェック必須でしょーと。
曰く、さっそく品定めかよー、と。
それ自体、今のアズが聞けば震え上がりそうな男子勢のやり取りを尻目に、特に話の輪に入ることもなく、転校生と教諭が去っていった教室のドアを、無言で見つめる眼鏡の少年と、転校生の存在自体に興味を示さず、けだるそうに窓の外を見つめている茶髪の少女。二人とアズの奇なる縁は、また日を改めて結ばれることになる。
* * *
男性教諭の後に続いて階段を1階へ降り、校舎の端へ向かっていく。案内されたのは、ちょうどファースト・プラムの教室の真下に位置する、「数学科教務準備室」とプレートに書かれた小部屋であった。中へ入ると、天上まで届くほどの高い棚に、数学に関係すると思われるタイトルのファイルや書籍がびっしり
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