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デュエルペット☆ピース!
デュエルペット☆ピース! 第2話 「聖職」(前編)
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げるんだ! 昨日の竜のようにデュエルピースを実体化されるともう逃げ場がなくなる! その前に早く!』

 ナイトの決死の呼びかけにも、アズは反応できない。恐怖―――車内で欲望にまみれた手を這わせられた時、そして先ほど密室で暴行を受けた時の恐怖がよみがえる。逃げるのが最も合理的で安全であることは獅子に言われるまでもなく理解していたし、実際、そうしたかった。しない、のではなく、できないのだ。脚がすくんで動けない。だからとて、仮にデュエルで立ち向かうことができるのは自分だけだと鼓舞したところで、その程度では恐怖を振り払うには到底足りなかった。

(だったら……どうしたら……)

『アズ! 逃げるんだ!』
「ナイト……一つだけ聞いてもいいですか」
『な、なんだい? こんな時に』
「あの先生は……放っておけばわたし以外の女の方にも……その……えと……ふ、不埒なコトをなさる……でしょうか」
『それは……』

 獅子が言葉に詰まる。それは肯定と同じであった。

『だが、それは君が背負う大義じゃないぞ』
「いえ……正直言うとわたし、大義でも背負わないと……怖くてここから一歩も動けそうにないんです」
『アズ……』
「だから、わたしに名分をくれませんか? 勇気やら希望やら、立派なものでなくていいんです。ただ……ひとことだけ……」
『わかったよ……アズ、私と一緒に戦ってほしい。君の力を貸してくれ』
「はいっ……」

 ナイトのために力を貸す……よどみのない理由ができたことで、全身の硬直が緩んだ。これで、動ける。

『ご相談は終わったかな? それでは、先生ェと練習試合といきましょう。もちろん、アナタのカラダをかけてね。先生ェが勝てば、あなたのカラダをいただきますよ。なぁに……教師は謙虚ですから、心までは頂きませんよ。カ・ラ・ダ・だ・けェ?』

 右手にデュエルディスクを出現させる男。その口から発せられる、下種な欲望が詰まりに詰まった言葉。それを無視して、アズは深呼吸し、「敵」を見据えた。肩の横あたりに、ナイトが浮遊し始める。
 アズとナイト、二人の声が重なる。

『「デュエルモード、セイバーフォーム!」』

 恐怖を振り切り、透き通った声が響く。戦意の発現とともにアズの身体は光に包まれ、変化する。瞳が紅玉のごとく変色し、黒髪も桃色へ変わって全体がボリュームアップし、ポニーテールが背中まで伸びる。ブレザーは消失し、レースで飾り立てられたブラウスの裾が超常の力にあおられて逆立つ。白のオーバーニーソックスが太腿を覆い、さらにその上から黒のブーツがコントラストを描きつつ足元を引き締めた。ふわりと吹き抜ける風とともに、華麗に変化した少女の身体を方からマントが包み込む。左腕には光が収束し、プレート状の器具、デュエルディスクが形作られた。
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