彼は一人怨嗟を受ける
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「あの地獄の突撃練習は恐怖とともに我が隊には刻み込まれております」
「ならいい」
徐晃隊を組むにあたって行った一つの訓練、それが全ての兵に染みついているのなら使える小細工だ。
「徐晃隊什長全てに伝えろ、対岸と合流と共に『鳴らす』から耳を澄ませ、とな」
「御意」
対して期待はしていないが攪乱くらいにはなるだろう。味方でさえ惑わす可能性があるので星にだけは伝えなければならないか。
少し考えに耽っていると朱里の隊から旗を振った合図が届いた。振り返り、自身の隊に大声で指示を放つ。
「徐晃隊、此れより敵横合いに突撃を行う! 真横から敵を食い破れ! いつも通りだ、俺に続けぇ!」
言うが早く先頭をきって敵軍目掛けて全力で食い込む。流されるままだった敵達の抵抗は激しくはなかったのでそのまま徐晃隊を後ろに貫いていった。
華雄さえ分断してしまえばこちらの策は一段階成功。
「押し広げろ! 半分までくれば趙雲の部隊が助けてくれる!」
ただ前の敵をなぎ倒していく。兵達は左右に少しずつ押し広げていくが敵兵もやっとこちらの狙いに気付いたのか一気に抵抗が上がった。
練度の高い兵ばかりだ。賊とは明らかに違う。だがいきなりの突撃に敵は混乱もしているようだ。
抵抗に耐えそのまましばらく敵部隊を切り開き続けると視界の端に純白の趙旗が見えた。
予想よりも早い、星の突破力は公孫軍でさらに磨かれたか。
「秋斗殿、お久しぶりですなぁ」
突如、一羽の蝶がひらりと舞い降り、返り血に汚れた顔で笑いながら言った。戦場に似合っているようで似つかわしくない妖艶なその姿はただ美しかった。
見惚れそうな頭を振り切り、隊に突撃を続けるよう指示して少し立ち止まり口を開く。
「星、少ししたらこちらで合図をする。その時は振り向かず全力で逆側を押し込み続けろ」
一瞬不思議な顔をしたがすぐに公孫賛軍の士官に伝えてくれた。
「戦場でいたずらですかな?」
「そんなところだ」
「では楽しみにしておりますよ」
他愛ない、戦場でするモノではないいつものようなやり取りを交わし、俺達はそれぞれが敵軍を切り裂いていった。
部隊を引き連れ、突撃を続けているといつのまにか中軍に位置していたはずの袁紹軍が上がってきていた。劉備軍を犠牲に乱戦に持ち込むつもりか。
「将軍! 後方、分断されはじめています!」
「なんだと!? くそ、もう少しだったと言うのに!」
張コウの隊はじりじりと減らしたが周りからの援護のせいで奴まで辿り着けなかった。このまま囲まれるのはまずい。
「仕方ない。張コウは諦めるか。張遼との約束もあるからな。全軍反転! 囲まれる前に引けぇっ! 殿は私と共に耐えろ!」
こうなるとせめて少しでも隊の被害は抑えておかねばならない。くそ、連合のくせにこ
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