彼は一人怨嗟を受ける
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後ろの兵達から雄叫びが上がり、士気が上昇したのが分かった。
これでしばらくは持たせる事が出来るだろう。
張コウはうまくやってくれた。しかしあの挑発には嫌悪しか浮かばない。
いくら挑発とはいえ人の主を楽しみながら平然と貶めるなど……これではこちらは下卑た賊と同じに見られるのではないか。私たちは民のために立ち上がったというのに。
戦端を開いた将の事を不快に思いながらも考えていると、敵後方から紺碧の張の旗が公孫賛軍に突撃していくのが見えた。
あちらの軍は異民族との戦を長く経験してきた真の精兵、騎馬の扱いに長けている張遼が抑えるのは当たり前か。
怒りで門を開けたにしては冷静だ。さすがは神速の張遼か。
両軍は今、傾いている。張コウ隊を中心にして。さらに徐々に後ろに下がっていたためもうすぐその先端は袁紹軍に付きそうなほど。
張遼隊の突撃接触と同時にこちらも公孫賛軍も一気に押し返し、その後そのまま鈴々の隊と並ぶまで戦場を維持し続けなければいけない。
合流後、徐々に下がり、張コウか秋斗殿が華雄を討ち取る。間に合わなければ袁紹軍になだれ込み押し付けるという朱里と雛里の策、信じている。
「最前、引けっ!」
号令後、すぐさま自分の隊の兵による急な後退で、敵は反応が追いつかず両軍の間に空白が出来た。
「槍部隊、突撃! 前方一面押し返せっ! 右翼は突撃兵をいなして流せ! 後陣には徐晃隊がいる、恐れるな!」
槍を構えた兵達が後退を行う兵の隙間を縫って突撃し敵兵を押し返し始める。このまま続けさせて最右翼は私が行き、押し上げてみせる。そして――
愛紗の隊は押し上げながらの後退に徐々に成功していた。公孫賛軍の方を見ると――さすがは白蓮、張遼の部隊相手に押し返していた。
挟み込むように敵を押し込む俺の隊に忙しく指示を出している中、明と先程一瞬だけ目線が交差した。記憶に残っている緩い顔では無く、厳しい表情と真剣な目は何を伝えようとしていたのか。
そういえば朱里も恐ろしかったが田豊、夕も大概だ。明の兵に随時補充を送り、挙句の果てに本陣を押し上げている。混戦のごたごたで華雄を討ち取らせるつもりなのだろう。
隊に指示を出し戦場を見回していると、華雄とその親衛隊が駆け抜けて行く姿を捉えた。少し華雄の周りの士気が高すぎるな。
「朱里の伝令はまだか」
横合いを突撃する指示を今か今かと焦れる心を抑え付けてただ待っていた。
今は華雄の兵を少しでも減らすべきか、とも思ったが独断は徐晃隊をも巻き込む事になるため他に何か出来る事は無いかと別の思考に潜り、少しして一つの名案が浮かんだ。
それを伝える為、後ろに控える義勇軍時代から追随してきている男を呼ぶ。
「副長」
「はっ」
「練兵の時の突撃の合図は全員染みついているな?」
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