彼は一人怨嗟を受ける
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など誰が予想する事が出来ようか。
聞いていたからこそ私は迅速に動けたのもあった。飛び出した私を合図に味方の行動が良くなり、混乱し始めた敵兵の隙を突いてさらに押し込む事ができた。
そのまま続けていると敵後方に騎馬隊が見えたが、張遼の姿は見当たらなかった。ふふ、騎馬の相手など腐るほどしてきた私達だ。張遼がいないのならなんのことはない。
「騎馬が来るぞ! 烏丸との戦を思い出せ! 奴等を相手にするつもりで当たるのだ!」
異民族の騎馬の怖さは嫌と言うほど身に染みている兵達だ。その対処法も。
そうか、これあるを見てのこの配置か! 恐ろしきは伏竜の先見か。
ここで戦線を維持し、華雄を討ち取る時間を稼ぐ。愛紗が張遼の相手をしてくれているのだろう。引き際を見極めなければここで全て終わってしまうぞ張遼よ。
何合互いの武器をぶつけ合ったのか。敵の戦線を見ても未だに崩れる気配がなく、華雄は戻ってこない。こちらも守勢に入られて抜くこともできない。
連合の即席とは思えない連携にしてやられた。関からも距離が離され続けている。
そんな中、部隊の一人が血相を抱えて戻って来て、
「将軍! 趙雲隊の猛攻が激しく抜けません! このままでは総崩れになります!」
絶望的な報告を一つ。戦前の華雄の言葉が甦り、自分は一つの覚悟を決めた。
「第一部隊の撤退を指示! 最速でや!」
聞いた瞬間は戸惑っていたが、自分の表情を見てどうにか命令を聞いてくれた。
きっと味方の将を見捨てたと詰られるだろう。しかしここで引かなければ董卓軍は連合に敗北が確定してしまう。それだけはダメだ。
渾身の一撃を放ち関羽との距離を取り、彼女に言葉を放つ。
「関羽、しまいや。董卓軍は負けるわけにいかへんのや」
「……行くがいい。我が隊は追撃に参加しない。他者の主をあれほど貶めて追撃まで行う。それは私の武人としての誇りが許せない」
一瞬呆気に取られたが、その眼は真実を語っていた。現に関羽の隊は動こうとする気配もない。敵ながらその誇り高い心に感心してしまう。
連合は意地汚い獣ばかりだと思っていたが、戦の分かるモノも多少は混じっているようだ。
「にゃはは、ええなぁ。あんたの事気に入ったわ。ほんならまた再戦しようや。今度は正々堂々、武人として」
「ああ、また会おう張遼」
関羽に背を向け駆ける。第一部隊が戻ってくるのも確認できたので未だ戦っていた部隊の元へ行き、指示を伝える。
「張遼隊撤退や! 残った部隊も追撃に意識を置きつつ撤退! 虎牢関まで引け!」
華雄、すまん。地獄で先に待っててくれ。うちも月を守って……いつかそのうち行く。
慢心は無く、焦りがあるか。しかしながらもその武、見事なものよ。
幾重もの戦斧を躱しきり、彼女の力を奪うように
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