Frohe Weihnachten !!〜聖夜の杯〜
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ーを喜ばす。生まれた時から仕える執事夫妻や、家族同様の愛犬と張り合うつもりはないが、その一員になれたような気がして、頬が上気してくるのを感じた。もっとこの男の話を聞きたかった。日頃は畏怖されることの多いこの上官が、どのような顔で愛犬を連れて使用人を労っているのか、叶うならば見てみたかった。
「そのような大切な場所に、よりにもよって小官をお連れ下さり、光栄の極みです。ご厚意に甘えて遠慮なく戴いているのですが、甘えついでに、もう2,3お伺いしてもよろしいですか」
もって回った言い方に、オーベルシュタインの眉間にたちまち皺が刻まれる。
「却下する」
にべもない返答に、フェルナーは殊更残念がって見せた。
「あれ、どうしてですか。せっかくの食事の席なのに」
オーベルシュタインはふんと鼻で笑うと、ナイフを使う手を止めずに言った。
「卿の目的は私を早く帰宅させることであったはずだ。であれば、効率的に食事を摂り、一刻も早く私を地上車に乗せて帰路に着くのが望ましいではないか」
正論というよりは屁理屈で応酬され、フェルナーが頬を膨らませる。
「そうおっしゃるなら、閣下こそ小官をここへお連れにならなければ良かったのではないですか」
「先ほどまで喜んでいたように見受けられたが、ずいぶんと勝手な言い草だ」
「勝手なのは閣下の方でしょう。有無を言わさずここまで来て、ご自分は早く帰りたいなど、大人げない屁理屈だとお思いになりませんか」
「ほう。卿には拒否する権利がなかったとでも?私は別に、卿の首に縄をつけて来たわけではない」
「それはそうでしょうとも。ですが私の言いたいのは……ああ、もう!!」
フェルナーの怒声と共に、オーベルシュタインがぐいとヴォトカを呷った。ドンとグラスを置くと同時に、フェルナーもぐびりと喉を鳴らして酒を飲み込む。
沈黙の時が過ぎる。しかしどちらも自ら席を立とうとせず、ただ料理と酒だけが淡々と運び込まれ、互いの胃の中へ消えて行った。フェルナーは5杯目になるヴォトカのグラスを右手に握ると、水でも浴びるかのような勢いで飲み下した。それまで何の感情も表わさずに、冷めた義眼で眺めていたオーベルシュタインが、まだ少々不機嫌そうに窘める。
「そのような飲み方をしては、体を壊すぞ」
そのぶっきらぼうな口調が癇に障った様子で、フェルナーは挑発するような視線を上官へと向けた。
「へぇ。普段から私を馬車馬のようにこき使うお方が、どの口でそのようなことをおっしゃるのでしょうね。俺はぁ、この程度の酒じゃ潰れやしませんよ。閣下に自信がおありなら、俺と勝負して下さいよ」
明らかにおぼつかぬ手元と舌足らずな返答に、オーベルシュタインは呆れたように息を吐いた。もう潰れているも同様だ。
「分かった、次回は付き合おう。だから、その辺でやめておけ」
自分を窘めにか
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