DAO:ジ・アリス・レプリカ〜神々の饗宴〜
第十一話
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遂げて日本に帰るためだ。
清文はイギリスに来るにあたって、親友である京崎秋也、天宮陰斗、そして、恋人たる杉浦琥珀に何も話さないで来た。彼らにあまり長い間心配を掛けたくない。
ここに来てから、もうすぐ一週間が経過しようとしている。日本をたった時、六月の終わりだったはずなのでそろそろ梅雨が明け、夏の足音が聞こえてくる頃になっているかもしれない。
――――今年の夏休みだけどさ、その……私、海に行ってみたいな。清文と、二人で。
今年の春、琥珀が呟いたその言葉が、清文の胸を締め付ける。約束を果たしてやれなかった。
「……ごめんな。……いま、どうしてるかな、琥珀……」
愛しい少女の名前を呼ぶと、より一層清文の心はキリキリと締め付けられる。
――――帰るんだ。俺は、さっさとこのワケの分からない実験を終わらせて、琥珀のところに帰る。そうしたら、いっぱい、いっぱい謝って……怒られるだろうな。けど、多分許してくれるはずだ。そうだ、お詫びになんか買ってやろうか。欲しがってるアクセサリーとかなかったかな――――
「あの、清文お兄様」
部屋の入口から、くぐもった声が聞こえてきて、清文の意識は現実に呼び戻された。
清文の事を『お兄様』などと呼ぶ人間はたった一人しかいない。《レプリカ》内で共に戦った、ハクガの妹、ハクナだ。わけあって現在は彼の人格を宿した、二重人格者となっている。
「どうした?何かあったのか?」
「はい、あの……カズさんが、呼んでます。全員集合〜って」
妙にうまい声真似を聞いて、清文はクスリと笑った。ハクナの意外な特技か何かなのだろうか。カズの顔が目に浮かぶ。
「わかった。今いく」
*
四条カズヤ、里見良太郎、鈴ヶ森ハクナ、栗原清文、雪村黒覇。《ジ・アリス・レプリカ》のテストプレイヤー……《適合者》の資格を得た、数少ない人間たち。五人は、現在ラボ内のパブリックスペースに来ていた。
「何だカズ。俺達を呼び寄せて何がやりたい」
黒覇がカズヤをにらんで言う。
「……お姉さんとの数少ない二人っきりの時間を邪魔されて不機嫌なんですね。分かります」
いつの間にかハクナが黒覇の後ろ側に立っていた。その顔には、いたずらっぽい笑み。
「なっ!?ば、馬鹿な、そんなことが有るわけないだろう!!むしろあのバカ姉を振り切れてせいぜいしているところだ!!」
「あ、直前までお姉さんと一緒にいたことは否定しないんですね」
「……」
顔を真っ赤にしてうつむく黒覇。非常に珍しい。写真に撮りたい。いや、カズはすでに写真に撮っていた。
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