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レンズ越しのセイレーン
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「「「「「エル! お誕生日おめでとう!」」」」」

 パンパンパン!
 クラッカーが弾け、色とりどりのリボンがエルに降り注いだ。

 この日、エル・メル・マータは10歳の誕生日を迎えた。

「ありがとう、みんな」

 笑って答えると誰もが笑い返してくれた。ジュード、レイア、アルヴィン、エリーゼ、そしてミラ。さすがにガイアスとローエン、ミュゼは来られなかったが、エルにとってこうして祝われるだけでも幸せだった。




 オリジンの審判から2年の歳月が過ぎた。

 あれからエルはミラと二人暮らしを始めた。今はトリグラフの中の下アパートで慎ましく毎日を送っている。
 ルドガーとユリウスのマンションは、収入などないに等しい彼女たちでは借り続けられなかったので出て行かざるをえなかった。

 働ける年齢ではないエルの分も補うように、今はミラが稼いでくれている。学費も生活費も全てミラ頼りだ。他にもジュードたちが融資してくれているのを知っている。

 いつか大人になってうんと稼いでミラを楽させてあげて、みんなにお金を返すのが、今のエルの夢である。

 今の生活があるのはガイアスとローエンという強大なコネのおかげだ。彼らに頼んで戸籍を無理に融通してもらって、エレンピオス国籍を取得したからこうしていられる。

〔パルミラ・イル・マータ〕
〔エル・メイム・マータ〕

 これが今のエルたちの名前だ。

 ミラのファーストネームはローエンが考えた。エレンピオス史に登場する遺跡の名で、「バラ色の街」という意味だ。ミラの目の色と同じバラ色の。


「楽しかったねー」
「そうね。たまにはこういうのも悪くないわ」

 エルとミラは二人でパーティー用に並べた食器を片づける。
 どれも綺麗に平らげてられている。エルが手伝えた料理はほぼないが、大好きなミラが作った料理をみんなが残さず食べてくれたのは誇らしかった。

 二人でシンクに並べた皿を、泡立てたスポンジで洗っては流していく。

「ミラのスープ、チョーおいしかった! 腕上げたねっ」
「そりゃ抜かなきゃいけないライバルが二人もいるんだもん。モタモタしてらんないわ」

 二人――ルドガーと、エルの父親。

「……エルは、ミラのスープはミラのスープのまんまでいいと思うけどな」
「何で?」
「だってミラのスープの味まで忘れるようなことになったら……だから、せめてミラは……」

 ミラは一度蛇口を停め、タオルで手を拭いてからエルを抱き締めた。エルが踏み台に載っているからちょうどいい高さで抱き合える。

「ミラのスープは、ミラの味のまんまでいい。ルドガーとかパパの真似しなくていいから。いつか食べらんなくなった時、絶対思い出せるようにそのままにして。おね
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