暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
人を超えるという事
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凛とした艶やかな声だった。

「まだ仮想世界です。ALO………かどうかは正直微妙なところですが」

首を巡らせると、少し離れたところに律儀に正座をしている巫女装束の女性と、黒いゴシック調のワンピースを着る少女の姿があった。少女の方の年齢は、ユイと同じくらいだろうか。

その二人のことを、俺は知っていた。

「カグラ…さん。マ…イ……ちゃん」

俺の呼びかけに、マイは伏せていた顔を上げた。その両目は、泣き腫らしたように真っ赤になっていた。

その眼を見、やっと俺の脳みそが本来の正常な思考を取り戻していた。ギアが上がり、冷え切っていた頭の芯を溶かし出す。

そしてそれは、意識が忘れようとしていた記憶を呼び起こすのに充分な出力であった。

目を見開き、俺は雪崩れ込んでくる拒否できない記憶の奔流に呑み込まれた。

「────……………ッッッッ!!」

ガバッと思わず上体を上げようとすると、神経そのものが身をよじったかのような激痛が全身を襲った。呻き、堪らず身体を硬直させてしまう。

だが俺は、それらの傷みを全て無視して傍らに座り直ったカグラに訊く。

「アスナは……、レンは………どうなったんですッ!あれから何が──── ッッ!」

「……アスナとレンならば、あそこですよ」

闇妖精(インプ)の巫女は、食い殺さんばかりの俺の気迫にたじろぎもせずに、その端正で流麗な顔を巡らした。方向は、ちょうど俺の左後ろを捉えている。

つられたように首を曲げ、己の背後を見た俺は絶句した。

無限に広がる虚空。

真っ黒に塗り潰されたその先で、眩くばかりの閃光が爆発していた。

大きさは一抱えくらいの小さなフラッシュだったが、ビリビリと空間が軋み、頬をなぶる衝撃の余波がその圧倒的な規模(スケール)をまざまざと伝えてきた。

────これが……、人間の戦いなのか…………?

ありえない。

これはもはや、介入するとか助けるとかの次元を二つか三つ軽く飛び越してしまっている。

コンマ一秒でもまだ足りない。一秒を万の単位で分けた速度域の中を生きていなければ、この戦闘に介入する資格など存在しない。

だけど────

立ち上がった俺を、カグラとマイは引き止めはしなかった。

ただ静かに、視線を向けてくる。

「行くのですか」

「あぁ。助けに」

「無駄かもしれないよ?」

「それでも、助けに行く。行きたい」

「キリト。真の意味で彼女を助けたいのならば、”今の”彼女を殺さなくてはいけません」

「あなたに……それができるの?」

純白の少女の発した問いに、俺は笑みを浮かべた。

本心からの、無色透明な笑みを

本心からの、無邪気な笑顔を

「当たり前だ
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