集う諸侯とそれぞれの思惑
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溺れさせてきたか。
人の感情を読み、するりとその隙間に忍び込む。何が一番いらつかせるのか。それを読み取るのが異常に上手い。
必要な時にしかしないから目立たないけど。
「作戦はわかった。初めは劉備軍だけで挑発してほしい」
「どうしてですか?」
「敵の反応が見たい」
劉備軍程度の挑発で動いてくれるなら万々歳だ。どうやら私の少ない言葉で諸葛亮は気付いたみたいだった。
「わかりました。では二、三日私達だけで行います」
「ん。多分成功する。明がいるし敵将が華雄だから」
劉備軍の将の面々が疑問そうな顔をしているが何故か、とは諸葛亮に聞けばいい。明の事以外は彼女の頭で予測が出来ただろうから。
この軍の情報は入ってる。
頭は二つ、手が三つ。そこに劉備という思想がいる。私と明からしたら偽善の集団。
ただの他人にそこまでする価値はないはずなのに。大事な範囲だけ守り続けたら自分の平和は訪れるのに。
私にはよくわからない。劉備が、劉備に妄信する人たちが。
けど……もっとよくわからないのがこの男。
黒麒麟徐晃。妄信者だと思ったら明が懐いた。それはまさしく異常な事。
だからこそ興味が湧いた。もっとしっかりと自分で確かめたいけど今は軍議を――
「一つ言っておく。中軍に私達が構えたのは手柄の横取りのため。だからあなたたちの作戦は私達にも有益」
言いきる。別に隠す事でもない。そのつもりで諸侯は集まったのだから。
警戒する関羽、驚く劉備、不機嫌になる張飛、一瞬驚きこちらの意図を考える軍師二人、徐晃は……私じゃなく周りを観察してる。何故?
「足並みを揃えるために言っただけ。互いの利益はわかっているはず」
これで安心。ぬるま湯に浸かったままでも思考は縛れたはず。もう観察する事はない。徐晃以外はどんな人物かわかった。
「そんな……利益がどうとかで戦うんですか。犠牲を減らすためじゃなく」
劉備が綺麗事を話し出した。それを聞いてか明がいらついてるのが背後からの気配で伝わってくる。
「あなたたちは犠牲が減る。私たちは犠牲の分手柄が手に入る。それだけ」
「それ……だけ……?」
何も言わないように明を目で制しておく。でも、視界の端に映ったが徐晃はどうしてかすかに笑ったんだろう。
「申し訳ないけどここまで。軍議中にありがとう。私たちにも仕事が残ってる」
そう言って立ち上がると
「ま、待って下さい!あなたたちは民のために立ち上がったんじゃ……」
劉備が問いかけてくるが私は何も言わない。しかし明はにんまりと意地の悪い笑みを浮かべて口を開いた。それはあなたにとっては意地悪だろうけどいらぬおせっかいというやつだ。
「劉備さん。あたしも仕事あるんで一言だけ。『現実を見てね』そんじゃ」
そして二人で天幕を後にした。私も少し
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