集う諸侯とそれぞれの思惑
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に手を降ろされ、何食わぬ顔で田豊の頭を楽しそうに撫でだした。
「張コウ」
お前も何か用があるのか、と続ける前に、
「明でいいよ。夕が安心してるって事は似た者同士なんでしょ、あたしたち。なら真名で呼んでほしいな」
「私も夕でいい」
遮られ、黙って撫でられていた田豊と共に真名を預けて来た。この子達独特の価値観があるんだろうか。
「……俺は秋斗。似てるけど違うだろうよ。俺は卑怯者なんでね」
「そういうことにしといてあげる」
にやにやと笑いながら明が言うが、その表情はどうせ本心じゃないくせに、と伝えていた。
「んじゃああたしたちの目的達成したし、そろそろ帰るよ。またね秋兄」
「ん。じゃあね、秋兄」
「ああ。またな」
勝手に真名での呼び方も決めてしまいさっさと歩いて行ってしまった。ずっと自分たちのペースを貫いた二人だったな。
それにしても自分のため、か。考えたこともなかったな。
そろそろ天幕に戻っても言い頃合いか。戻ろう。軍議の続きを行いに。
「あ、秋斗さん! おかえりなさい。私決めたんだ!」
秋斗さんが天幕に入ってくるのを確認して、桃香様が決意に燃える瞳で彼に語る。
「あの人たちの考え方は間違ってる! 命は損得勘定していいものじゃないと思うの」
「……なら作戦を変えるか?」
桃香様の理屈ならばそうなる。でも変えられない。
「……変えられないよ。悲しいけど。だって連合軍全体の被害は抑えられるんでしょ? じゃあそうするのが最善だと思う」
結果を見ればそうだ。連合全体の被害は、私達の囮があるからこそ抑えられるのだから。
「ならせめて……いつかあの人達の哀しい考え方を変えてみせる!」
桃香様は勘違いをしている。秋斗さんが何も分かっていないと思ってるんだ。
「ははは、桃香らしいな」
秋斗さんはあの人達がどういう人かもわかってるのに。桃香様の答えもわかってたんだろう。だから動じない。対して皆は桃香様の考えに感嘆している。
私はどうか。
確かに素晴らしい考えだ。とても尊いものだろう。けど王としての考えではない。人の考えを否定するだけじゃだめなのに。
自分だけが正しいわけじゃないんだ。人は皆同じじゃないし同じになれない。
思想の押し付けは人の拒絶と変わらない。王なら余計それを理解してそういう人もいるんだと飲み込むべきなんだ。
心の領域を守るのも大事。
それに確かに命の取捨選択はひどいことだけど自分もそれをしていると自覚しなければならない。
そうしたら考え方を変えるなんて発想は出てこなかったはず。
これから気付いてくれるんだろうか。
「どうしたの雛里ちゃん?」
「なんでもないよ朱里ちゃん」
不思議そうな顔で私を見つめる朱里ちゃんに嘘をつき、チクリと胸が痛む。
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