集う諸侯とそれぞれの思惑
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意地悪してしまったからいいか。
†
二人が出て行った後の天幕を沈黙が支配していた。
雛里は桃香に何か言いたそうだったが首を振ってやめておけと暗に伝える。
「すまないが少し外の空気を吸ってくる」
俺は一言呟いて天幕を出た。夕方の風が頬を撫でて心地いい。
桃香がこれから言うであろう答えなんか分かりきっている。
あの人たちは間違ってる。
そう、言うんだろう。だが全員に楔は入った。ああいう人間と直接会話できたのは大きい。この戦いの後が期待できそうだ。
しかしあの二人。よくわからなくなったな。
「ん。やっぱり出てきた」
不意に横から声をかけられた。その方を見ると田豊がゆっくりと歩いて近づいて来ていた。
「田豊……殿」
「いい。普通に話して」
お言葉に甘えるとしよう。警戒をといてなるべく自然な様で彼女に話しかける。
「ありがとう。何故ここに? 張コウ殿は……」
すっと腕を上げて無言で指を差す先には張コウの後姿。一定のリズムでかかとを片方の靴に軽く打ち付けているのは暇つぶしなんだろうか。
「私はあなたに聞きたい。あなたはどうして劉備軍にいる」
じっと俺のことを見やる瞳は俺に全てを話せと言った日の曹操を思わせた。少し観察されただけでこちらのことが看破されたのか。
「……俺はここですることがあるんでね」
「……」
誤魔化し、ぼかし、曖昧と誰にでも分かるように言うと彼女は思考に潜っているのか瞳の色が深まっていった。
「……あなたは私たちとほとんど同じ。だけどちょっと違う」
小さく、囁くように紡いだ言葉の意味するモノは、はっきりとは分からなかったが興味を引かれた。
「聞かせてくれ」
「あなたは自分のためだけど自分のためじゃない」
何が、とは聞かなくてももう分かった。そうか、俺に足りないのはそこだな。俺自身の戦う意味や理由。俺だけの願いはなんだろう。
借り物でしかない俺では無く、作られた徐公明のすべきことでは無く、秋斗という人間が本当にしたい事はなんなのだろうか。
「……感謝するよ。俺は自分の理解が足りてなかったようだ」
「ん、いい。私はあなたが少し理解できた。全部じゃないのが不満」
「クク、人の全部など誰にもわかりゃしないさ」
そう言って頭を撫でておくと、
「……」
不思議そうに無言でこちらを見上げてくる。くりくりした瞳はどこか小動物を思わせて、そういえばうちの軍にも二人同じのが居たなと思い出す。しかし可愛いなぁ。
「可愛いなぁ」
驚愕。既に真横に来ていた張コウがニコニコしながら呟いた。いつの間にこんなところまで近づいて来たんだ。
「夕って凄く可愛いでしょ? でもダメー。この子はあたしが撫でるんだから」
手を大きく振り上げてバッテンを作り、その後に強引
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