焦がれる雛は
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緊張した面持ちでおずおずと笛を一斉に口に当てた。
そして子供たちの演奏が始まる。
始まりの音が流れ出すと同時にゆっくりと目を瞑り、可愛らしい子供たちの演奏に耳を傾けることにした。
†
凄いです。
楽器である笛を警備や軍に活かすなんてどんな発想をしているんだろう。
確かに銅鑼などは戦でも使われるが持ち運びが面倒だ。
しかも高い音を出すこの笛は喧騒の中でも聞き取りやすいのは間違いない。それにその過程で子供たちの娯楽にも使えるものまで作ってしまうなんて。
目の前の子どもたちはたどたどしくも立派な楽師になっていた。
一生懸命な子供たちは秋斗さんに聴かせるために練習してきたんだろう事が分かる。
流れ出る音色は一部の乱れも無く、それぞれが役割を補い合って一つの曲を紡ぎ切った。
心に響く演奏というのはこういうモノをいうのかもしれない。じわりと暖かくなる胸を押さえ、ほうとため息をついてから手を合わせて拍手喝采を送る。
気付けば街の人達も主賓である私達二人に気を使ってか、少し離れたそこかしこから拍手を送っていた。
「どうだった!?」
子供たちのまとめ役の一人が近づいて来て秋斗さんに笑顔で聞く。
「いい演奏だった。宮廷でもこんな演奏は聴けないだろうな」
笑顔でその子の頭を撫でてから皆に向かって言う。頭を撫でられた子は褒められて照れくさいのか、はにかんで俯いたがくしゃと笑顔をさらに深めた。
「あぁー! ずるい! 僕も撫でてよ!」
「じゃあ私はおんぶしてー」
「えぇー! じゃあ抱っこしてよー!」
それを見てか皆、近寄ってきて口々に話す。先程の結束はどこへやらだ。
「お姉ちゃんも一緒にやってみる?」
突然、一人の女の子が話しかけてきたので、
「あわわ、その、いいんでしゅか?」
噛んでしまった。子供たちの前なのに……恥ずかしい。
「ふふ、お姉ちゃん面白いねー! やろうよ!」
そう言って水笛を一つ手渡される。よく見ると可愛らしい絵柄が描かれていて、彼女の手作りなのだと分かった。
「雛里、水の量で音色が変わるから皆で合わせたほうが楽しいぞ。お前達、今度はこのお姉ちゃんも入れてやってみてくれないか?」
「「いいよー!」」
「じゃあ合いそうな音は……これくらいだな。これなら適当なところで鳴らしても大丈夫だからな」
もう一度並んだ子供たちの列の一番端に促された。うぅ、出来るかな。
戸惑っていると演奏が始まり、慌てながらも皆の音を乱さない時機を見計らって笛を奏でた。
演奏は何故か上手くいった。観客の人の歓声と拍手を受け、高揚する胸を押さえながら、列を離れる。
「お姉ちゃんすごーい!」
「僕たちと完璧にあってたよ!」
「今度から一緒に練習しようよ!」
口々に皆が
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