覇王と黒麒麟
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突如その報は入った。
後方に黄巾と思われる集団出現、敵将張角。諸侯軍、後背からの賊の突撃により小破。前方黄巾賊、士気上昇、討伐軍側に突撃開始。
まずい、と思った。後方の諸侯軍は数こそ多いが突然の奇襲により指揮系統が不安定なまま徐々にこちらに圧されている。
義勇軍、孫策軍ともに敵後陣の突撃により圧されることはないが拮抗してしまった。本来なら城壁前に空間が開き、官軍との挟撃ができるはずだった。
しかし追加で現れた賊と目の前の賊の異常な士気に圧され、さらに私達にある程度殲滅させるためか官軍は出てこない。
「そんな……ここで協力しないと被害が増える一方なのに」
逆に噂が仇になったのもあるだろう。それに所詮は義勇軍、とも思われているはずだ。
こうなっては対応を早くするに限る。
「朱里ちゃん、抜くしかないよ」
「うん。このままだと後ろの諸侯軍と混ざっちゃう。それに抜ききったら官軍の人達も動くかもしれない」
無理やり抜ききると後ろは挟まれることになる。しかし軍同士が混ざってしまう方が今の状況では酷い。
「伝令、このまま直進、最速で敵陣を抜き、壁まで到達。その後偃月陣を敷き、賊と応対してください」
近くの兵に最前への伝令を頼むと、全速力で兵は駆けて行った。
間に合うかな。いや、間に合わせないと。
軍師達からの伝令が届いた。無茶を言う、しかしそれを押し通さなければ道はないようだ。
「我らが血路を開く! 各兵、追随し道を開けよ! 案ずるな、士気が上がろうと賊に過ぎんのだから!」
そう言って目の前の敵を薙ぎ払う。鈴々は先頭で次々と賊を屠っていく。秋斗殿は私の逆側を広げる。
敵も怒涛の突撃だが奴等は未だに戦列がまとまっていない。後ろが整う前に速く、速く。
不意に敵の圧力が少なくなった。
見ると中央の孫策軍が鶴翼陣を敷き敵を集めてくれていた。そんな事をすればすぐに後背の諸侯軍と混ざってしまうはずだ。
だが他の軍に構ってなどいられない。これを機にと私たちの軍は速度を上げ、迫りくる敵軍を突き刺していった。
どうにか間に合ったようで義勇軍の先端が敵軍を貫いていく速度が速まった。
「貸し一つ、ね」
「無茶を言うな、お前も」
将や大将はどうか知らんが向こうの軍師達は確実に借りだと思っているはず。
ただでさえギリギリ兵力での駆け抜けだ。あのままでは義勇軍の被害は凄まじいものだったろう。
「いいじゃない。それに孫呉の軍の精強さを確認するいい機会でしょ。祭も暴れたりないみたいだったし」
そう言ってペロリと舌を出す雪蓮。こいつの豪胆ぶりには呆れを通り越して尊敬すら感じる。
「まあ悪くないし、利の方が多いな。それにこちらの用兵も見せたかったから丁度いい」
戦端を開いた義勇軍側の
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