覇王と黒麒麟
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自分達の作った地獄がここにある。まるで壁が生死の分かれ目のようだった。
真ん中にいる私達はどっちなんだろう。
思考を続けるだけでしばらくの無言。どうしてか不意に秋斗さんがこのままどこかへ消えていってしまいそうな感覚がした。
きゅっと胸が締め付けられて堪らなくなり手を繋ぐ。仄かな暖かさが心地いい。ここにちゃんといるのを確かめる事が出来た。
「雛里」
「はい」
突然名前を呼ばれる。なんだろうか。
「お前のおかげで落ち着いた。ありがとう」
秋斗さんはすうっと空に消えるように言葉を放ち、遠い目をして空を見上げはじめた。
この人は優しい。本来ならそういうものと割り切って捨ててしまうものと向き合う。
私はどうだろうか。きっとこの人と会わなかったら捨てていた。そして見て見ぬふりをしていただろう。こうして失わせてしまった命とちゃんと向き合わなかったかもしれない。
今回はある意味正義をもった人達だったんだ。途中で歪んでしまった。何を望んでいたのかも理解してる。
本当はそれぞれの笑顔があったはずの人達。それぞれの幸せのために動いた人達。
「やり方は違うが、かわりに俺達が世界を変えよう」
私の心を読んだかのように彼は決意を口にした。
それが未来を奪ってしまった私たちにできる唯一の事。
†
「ここにいたのね徐晃……鳳統も一緒だったの」
城壁を上がり、目に移ったのは二つの影。夕日に照らされた二人はひどく切なく、そして美しく見えた。
「あわわ、曹操さん」
私を見つけ、可愛らしく徐晃の後ろに隠れる鳳統。……愛らしい……けれど今は我慢しましょう。
「邪魔してしまったかしら? 徐晃と二人で話がしたいのだけれど」
そんな言葉を聞いて徐晃は振り向く。澄み切った顔はこれまで見た事があるモノとは違っていた。憂いに浸ったその表情からは深い一つの感情に支配されているのが見て取れた。
この男はこんな顔もするのか。やはり興味深い。
鳳統は手を放したが徐晃の影に隠れたまま離れようとしない。
「雛里、すまないが曹操殿と二人で話す。少しあの物陰の夏候惇殿の所に行ってくれ」
言われるとしぶしぶといった感じで離れていく。春蘭、あとでお仕置きね。
鳳統が離れるのを確認して、すっと剣を渡してくる徐晃。
「なんのつもりかしら?」
「夏候惇殿の安心のためです」
剣を受け取り私の後ろに置く。確かにこれなら多少はあの子も落ち着くか。
「あなたに聞きたいことがあるのよ」
そう言うといつものような徐晃に戻った。
「私のためにわざわざ足を運んでいただき申し訳ない。何でしょうか曹操殿?」
「気にしなくていい、単刀直入に言いましょう。あなたは劉備に心からの忠誠を誓っていないわね」
ピシリと聞こえないは
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