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乱世の確率事象改変
覇王と黒麒麟
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な戦を越えて結束力が高まるのは自然なことだ。ましてや義勇軍、気苦労も絶えない事はず。こうして戦の後に無事を確かめ合い、笑いあえるのも強さの内なのだろう。
「そ、曹操さん!え、えと、この度は長い間お世話になりまして……」
「堅苦しい物言いは構わないわ。それにお互い様でしょう、我が軍の兵士達の被害も抑えられたのだから」
 そう、十分に利用はさせてもらった。行動をともにするにあたりこちらの軍師である桂花が諸葛亮や鳳統に感化されていい成長を遂げてくれたし、春蘭や秋蘭に続く他の将の面々も関羽や徐晃から学ぶこともあったようなのだから。
 それに内政や軍略においての他の視点からの意見を聞けたのも大きい。
「でも、ありがとうございます。本当に助かりました」
「その礼、受け取っておく。そういえば徐晃と鳳統はどうしたの?」
 しっかりと礼を言う劉備に関心しながら、この場に足りない二人の所在を聞く。私は徐晃に話したい事と、聞いておきたい事がある。
「それが……ふらっとどこかへ行ってしまって」
「そう。まあいいわ。ではまた会いましょう劉備。大将としてこれから大きくなりなさい」
 私の前に立ちはだかるほどに、とは続けない。
「はい!」
 力強く返事をする劉備を見てから踵を返し、その場を後にする。
 彼女達から見えなくなった所で何か言いたそうな秋蘭を見ると、
「華琳様。徐晃に何か? 先ほど城壁の上に登って行くのを見ましたが」
 報告を一つ。よく見つけてくれたわ。
「ありがとう秋蘭。では会いにいきましょう。あの男と二人で話がしたい」
「あ、あの男と二人でですか!? いけません! せめて私が護衛に――」
「春蘭、あなたの焼きもちは可愛くて好きよ。ただ今回は我慢して頂戴」
 慌てて止める春蘭だったが私の言葉を聞いて不足気味に俯く。その愛らしい仕草にこの場で愛でてあげたくなったがなんとか我慢した。
 黄巾の最中も観察してきたがあの男の真意がまるでわからない。だからこそ興味がある。
 それに……上手く行けば手に入るかもしれない。

 †

 激しい運動などあまりしないので息は荒くなったが、なんとか城壁の上に辿り着くと一つの黒い影が佇んでいるのが見えた。
 赤い夕陽に照らされた大きいけれど……どこか小さな背中がすごく寂しそうだった。
「雛里か?」
 皆と一緒にいるつもりだったが拠点の城壁の上に向かう秋斗さんを見つけ、不安な気持ちが溢れてきてついて来てしまった。
 気配を察知したのか振り返らずに聞かれる。
「はい。秋斗さん、どうかしましたか?」
 何かあったのか、と聞いても答えてくれないのはわかっていたので、私はそのまま近付き隣に並んだ。
 涼しい風と血の匂い。下に目を向け辺りを見渡すと夕暮れの斜陽の光に地面を彩る血の赤が同化していた。
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