覇王と黒麒麟
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なた、よかったらだけどうちにこない? 義勇軍じゃもったいないわ」
そんなにやりと笑っての急な勧誘に面喰らう。だがこちらも苦笑して、
「美人の誘いを断るのは申し訳ないんだが、俺にはここでやることがあるんでな」
「残念、他のと違って劉備に心酔してるわけじゃないからいけると思ったんだけどなー」
答えるとあっけらかんとしながら口を尖らせつつ流し目を送ってくる。俺が断るのをわかっていたくせに。
「さあ、なんのことやら」
名残惜しそうに見やる彼女に星の真似で誤魔化すと、
「ま、いいわ。そのうち一緒にお酒でも飲みましょう。それじゃあね」
サバサバと言うが早くさっさと軍を連れて行ってしまった。
「……クク、戦場でする会話じゃあないな」
彼女のあまりの破天荒さにしばし呆然としてしまったが、苦笑と共に呟いて気持ちを切り替える。
さあ、あと少しだ。この哀しい賊達の乱に終わりを。
西の偽張角が何進軍に、南の偽張角が袁術の将、紀霊に討たれ、各諸侯は殲滅戦に入った。
全ての偽張角を倒すと黄巾の賊達の士気は見る間に下がり、もはやただただ駆逐されるだけだった。
本物の張角はすでに死亡していた、と俺たちが追撃して倒した最後まで戦っていた黄巾の将は言った。
全軍にそれが伝わると、まだ各地にちらほらと残党はいるが、ここに一応の黄巾の乱の終結が告げられる。
各諸侯たちはそれぞれの領地の残党の対応のため戻っていく。
大陸全体を脅かしたこの乱は、新たな波紋を広げることになる。
†
「終わったねー」
「皆で掴んだ勝利なのだ」
「そうだな鈴々。これだけの諸侯が一同と会す機会などもうないだろうし」
「みんな、怪我はない?」
「鈴々は大丈夫なのだ」
「私も大した怪我はありません」
「私はないです。桃香様は――」
「うん。大丈夫だよ。……皆にあんまり怪我がなくてよかった」
「桃香様……。その、往来で抱きしめられると恥ずかしいのですが」
「無事で嬉しいんだよ」
「それよりお兄ちゃんと雛里はどこにいったのだー?」
「うーん。どこにいったんだろう」
「先ほど秋斗殿は少し歩く、と行ってどこかに行かれました」
「雛里ちゃんは秋斗さんを追いかけていきましたよ」
「秋斗さん、たまによくわからないからなぁ」
「たぶん、雛里ちゃんは秋斗さんが心配で付いていったんだと思います」
「雛里がついていたら安心ですね。聡い子ですから」
「仲良しさんだしね」
陣を敷き、軍の管理を桂花に任せて官軍の拠点に入ってから、しばらく歩くと楽しそうに話す劉備軍の面々が見えてくる。
「勝利の余韻に浸っている、といったところかしら?」
言いながら見回すと劉備達の表情は皆、安堵と安息に染まっている。
大き
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