覇王と黒麒麟
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しかしあれらの武将はただの将とは一線を画す存在。
その圧倒的武力は相対するものが同等の存在か、それを抑え切れるほどの物量の兵でしか釣り合わない。
それが五人も、この狭い戦場で即席とはいえほぼ完璧な連携で敵に襲い掛かっているのだ。練度の低い農民あがりの黄巾賊など紙のよう。
私とあちらの軍師はそれがわかっているからこその用兵を行った。
「ふふ、戦術に組み込むのも一苦労だがな」
一人ごちる。戦場を見回すと敵の士気低下が目に見えて分かった。
右翼の殲滅もあとわずか。官軍は手柄に釣られてのこのこと黄巾本隊に向かっていった。
救出という手柄は私たちが貰った……まあ、義勇軍とで二分されるが。
後は後詰として居残るのが得策だろう。無理はしなくていい。欲を言えば賊将の首でも欲しかったがそれくらい袁術にくれてやろう。
首魁を討ち取ることで官軍の顔も立つだろうし。
黄巾本隊に向かった官軍の事を考えているとふと疑問が生じた。
それにしても敵本隊の制圧に時間がかかりすぎている。そこまでこの大陸は弱り切っているという事か。
「冥琳様」
南の袁術軍に伝令に行かせた明命が帰ってきたようで、音も無く背後に現れ、声を掛けられた。
「どうした?」
「南側、戦況不利です。首魁張角と名乗る本隊の出現につき即時救援求む、と」
唖然。明命の報告に自身の思考が一瞬真っ白になった。バカな、では官軍は何と戦っているというのか。
「また張角だと!? 宗教集団の教祖の名をこれほどまでに偽って……奴らはなんなのだ!」
「第一出現の張角を倒した曹操軍のほうへ斥候に向かった思春様と途中、情報を交換してきました。すでに張角は死んでいる、だそうです。曹操軍は夏侯淵が討ち取ったのは波才という賊将だったとのこと」
淡々と続けて報告を行う部下の有能さに舌を巻きつつ思考を再開していく。
既に死んだ教祖の存在を隠し、もはや抑えきれなくなった暴徒を落ち着かせ、突撃させるための苦肉の策、もしくは教祖の思想を引き継いだつもりでいるのか。
「ごくろうだった明命。すまないが戦場の雪蓮に伝令を頼む。内容は張角の死、南のバカのために偽張角の撃破に向かう、だ」
「御意」
一つ返事をして目の前から煙のように消える明命。
こちらにいらぬ被害を出させるつもりかあの女狐め。やりにくいことこの上ない。
まだ我慢だ。我らの悲願のために。すまない、孫呉の兵たち。かならず達成するからな。
「あら、ごめんね徐晃。急用が入っちゃって、義勇軍にここの殲滅任せるわ」
急な伝令を聞き孫策が片手を顔の前に立ててウインクしながら言った。しかしその伝令が女忍者なのにはつっこまんぞ。
「ああ、本当に助かった。ありがとう」
「お互い様よ。劉備にもよろしく言っておいて。それとあ
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