覇王と黒麒麟
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いた思考を打ち切り、戦場に意識を向けて孫策の言っていたことを伝える為に、急ぎで伝令を向かわせた。
これが孫策軍の用兵。こちらの一番してほしいことを的確に行って、尚且つ合わせてくれる。こんなに頼もしいことはない。
ジリ貧だった私たちの軍は被害が甚大になるはずだったのに……借りを作ってしまった。
きっとこの用兵を行っているのは噂に聞く周瑜さんだろう。
的確で、迅速で、力強く、連携も抜群。
見習おう、私も負けないように。誰にだって負けたくない。戦術だけは絶対に。
「朱里ちゃん。私は負けないよ」
ぽつりと誰に言うでもなくつぶやく。これは決意の確認。あの時に、出会った時のあの人に言われたことを反芻する。
もう嫉妬に焦がれることはない。もう過去の弱い自分はいなくなる。ここからはいつもの通りだ。ただ、がむしゃらに頑張るだけ。
そうすれば一人でも多くの兵を救える。
そうすれば皆も守ることが出来る。
私も戦うことが出来るから。
不意に初めて軍師になった日の記憶が蘇り、地獄のような光景が頭を駆け巡った。
どうにかふるふると頭を振って落ちて行く思考を切り替える。
いいや、地獄はここだ。
私が作ってるんだ。これからも作っていくんだ。
覚悟は明確な形となって私のするべきことを指し示す。
なんでだろう。急にあの人に会いたくなった。あの人はいつもと同じに心に刻んでいるんだろう。哀しい目で、自分のしている事を確認しているんだろう。
私もあんな目をしてるのかな。しているのかもしれない。隣に立つことは出来ないけど、後ろから支えています。私も同じだけ祈りを連れていきます。
「伝令です!」
「あわわ!」
一人の兵に後ろからいきなり声をかけられてついいつもの口癖がでてしまった。
「官軍が城門から出撃する模様です。徐晃様から指示が欲しいとのことですが」
戦況が有利になったのを見てか、官軍の人達もやっと重い腰を上げてくれたようだ。
「では、私たちの軍は右翼側を引き続き攻撃、官軍の方には本隊と戦闘中の諸侯軍の援護に回ってもらうよう伝えていただけますか」
「はっ!」
私達はこのままのほうが行ける。今下手に官軍と共闘すると連携が乱れて被害が増えかねない。
敵大将もいるのだから名誉挽回したい彼らはそちらを優先するだろう。
それから私はさっきの彼への思考を振り切り戦場に意識を集中した。
「まだ油断はできんが……ある程度落ち着いたか。それにしてもなんてでたらめな」
雪蓮と祭殿と義勇軍の将達に向けての感想が漏れ、思わず苦笑してしまった。あの五人は手を組んだ途端に圧倒的な力で士気高い賊達を屠って行った。
将とは旗だ。それぞれの受け持つ部隊を奮い立たせ、導き、力を示すための。
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