覇王との対面
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るはずだった人物なのだから。
「秋斗さん。どうでしたか? 会ってみて」
雛里が尋ねてくる。この前の話を覚えていたのだろう。
「ああ、想像以上だった。彼女は間違いなく英雄で、この乱世の果てに相対することになるんじゃないかな」
確実にそうなる。俺たちが大きくなる頃には、最大の敵になっているだろう。
あの化け物と相対しなければいけないとは、随分とまあ無茶を言ってくれる。
「ちょっと待って、秋斗さん。あの人は――」
「『今は』味方だ桃香。彼女も言っていただろう? 今は協力して、と。これから先大陸が乱れるなら戦うことになる、と彼女も感じてたんだろうよ」
そう言うと桃香は真剣な、叱るような目で俺を見て言う。
「戦うだけがすべてじゃないよ秋斗さん。他にも方法があるかもしれない。そんな可能性も、私は信じてみたいな」
最後ににへら、と笑いかけてくる。そうだったな、こういう奴だからこそ俺は賭けてみてるんだった。
愛紗も、朱里も、雛里も、鈴々でさえも感嘆しているようだ。
「……くく、敵わないな、桃香には」
自身の本心を苦笑で誤魔化す。
俺は妄信はしない。誰かは冷めてなければいけない。それでもやはり、引き込まれそうになるが。
「ええ!? 私なんかなんにもできないし皆の方が凄いし……」
照れたのかぶつぶつと一人話し始める桃香に、
「桃香はすごいよ。皆もそれがわかってる。それに一人でできないことも皆でやればできる……だろう?」
「そうです桃香様、私たちもついています」
俺と愛紗の言葉に賛同してコクコクと頷く軍師二人。
桃香の凄さは分かりにくい。有名な親がいるわけでもなく、特殊な教育を受けたわけでもなく、私塾には通った事があったとしても、ただの普通の子が民の為にと独立勢力を築こうとするなんて出来やしないはずなのに。
人を救いたいという純粋な願い、それが自身の欲ではなく心の底から来ているが為に人に好かれる。
自己犠牲ともとれるそれの名は、仁の中でも慈愛の心。だがまだそれに自身でも気付いていないだろう。
また、ここでは誰も気付いちゃいないが危うさが残っていたりもする。
牡丹が嫌っていた理由もそれだけど。
「そうなのだ! お姉ちゃんはノーテンキに構えてればいいのだ!」
お前もノーテンキだけどな鈴々、とは言わないでおこう。桃香の場合、成長してくれないと俺としては困るんだがな。
「ひどいなぁ……。でもありがとう。じゃあとりあえず、目の前の問題片しちゃおう!」
威勢よく言いきる桃香。それを合図に皆動き始める。
こうして俺たちの黄巾討伐は始まった。
いつまでかかるかわからないが、一人でも多くの人を救うために。
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