覇王との対面
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朱里は鈴々の補佐、前も後ろも指示をだせるように……か。
「桃香様は本陣にて私と共に指示と兵達への伝令や鼓舞をおねがいします。各部隊への兵の追加割り振りも行いたいので」
「了解だよ! じゃあ作戦も決まったことだし、皆、行くよー!」
『御意』
各隊の割り振りと配置を決定、こうして黄巾との初戦闘が幕を開ける。
†
「秋斗殿、落ち着いておられるのですね」
この人はこんなに大きな背中をしていたか。前を歩く彼の背をみてそう思う。
「ん?内心びびってるかもな、だが俺を慕ってくれている兵達の前だし、そうも言ってられんよ」
口で軽口、顔には笑顔。兵達にも緊張をほどよくほぐさせている。
「ふふ、戦前にそれだけ軽口を叩けるのなら大丈夫でしょう」
「なんだ心配してくれたのか? ありがとうよ」
嫌味とも取れる言い方をしてしまったが彼はこちらの本心を間違わなかった。
本当にこの方は……。そういえば、幽州の賊討伐では一緒に戦ったことはなかったか。
「共闘は初めてですが、期待しています」
「軍神のそんな一言があれば負ける気はしないな」
大きく褒められて少し照れる、だがこちらも素直に頼もしいと思う。
その時、ついに斥候から報告が入った。
「敵陣、動きあり!」
「来たな。愛紗、いこうか」
「ええ。義勇軍の勇者たちよ! 作戦は説明した通りだ! 敵は多いが我らには勝利が約束されている! 全軍、迎撃態勢をとれ!」
厳しい訓練に耐えた義勇兵も多くいる。人を救うためと立ち上がってくれた仲間達だ、信頼している。
「初戦場の人も、違う人も、平和のために集まってくれた。これがその第一歩だよ!」
桃香様も本陣にて鼓舞しているようだ。
ここよりは戦場。私たちは、主を守り、期待に応え、敵を屠るのみ。
前を見やると砂塵と共に敵が……来た。
「声をあげろ!」
瞬間、軍という生き物から雄叫びがあがる。殺気、怒気、恐怖、憎悪、あらゆる負の感情を叩きつけるように。内にある大切なモノを守るために。
「行くぞお前ら! 俺達に続け!」
秋斗殿の掛け声と共に並んで飛び出す。戦端は開かれた。
†
また戻ってきた。
戦場に。吐き気のする、この場所に。血が出る度に心が凍る。剣戟の音で頭が冷える。飛び散る臓物に吐き気を催す。向けられる刃が恐怖を与える。
どれだけ斬っただろうか。まだ身体は軽く、思うように腕が振れるのは確かだ。
戦場に於いては時間が延びるか短縮される。今回は前者の状況らしい。誰しも、嫌な事をしている時は、速く終われと願う心からか、時間が過ぎるのは酷く遅くなる。
きっと心が擦り減っていっている。だからこんなに、生死のハザマにいるというのに、冷静に思考していられるんだ。
少し、繰り返し向かって
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