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ひとりぼっちのナタリー
第二章
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て家にあがった。俺は彼女をリビングに案内した。
「部屋には行かないの?」
「いや、ここでいいよ」
 俺は別に変なことをするつもりじゃなかった。勿論期待はしていたけれどこの時はそれよりもずっと大切なことがあった。だからそれを先にしなきゃけないと思っていた。
 それが音楽だった。もうギターは持って来ていた。リビングのソファーに彼女を座らせて俺はキッチンのテーブルの椅子の一つに腰掛けた。その手には当然ギターがあった。
「じゃあはじめるね」
「曲は?」
「俺の曲でいい?」
 俺はそう尋ねた。それが嫌なら別の曲を選ぶつもりだった。ギターは毎日やっている。その中でもプレスリーの曲にはかなりの自信があった。
「それでよかったら」
「ええ、それでいいわ」
 ナタリーはそれに頷いてくれた。それで決まりだった。
「ポップスよね」
「ああ」
 俺は答えた。
「軽い曲だけれどね。一番新しい曲でいいよね」
「ええ」
 こうして俺は自分の曲を演奏して歌った。その間ナタリーは黙って俺の曲を聴いてくれた。
 曲が終わってから俺は彼女に顔を向けた。それから尋ねた。
「どう?」
 俺の曲のことを。これは自然な流れだった。
「俺の曲。よかった?」
「ええ」
 彼女は笑みを浮かべて頷いてくれた。
「いい曲ね、軽いっていうか」
「あれっ、違った?」
 その反応に俺は少し戸惑った。リズムは軽いように作ったつもりだったからだ。ナタリーの言葉に何か不安になったのを覚えている。
「いえ、歌詞が」
「歌詞が」
「ええ。悲しい歌詞ね」
「ああ、これね」
 それを言われて安心した。それで俺は歌詞のことを説明した。
「この歌詞はね、そうした歌詞なんだ」
「あえてそうしたの?」
「うん、それに気付いてもらったんだね」
 俺はそれがかなり嬉しかった。歌詞まで聴いていてくれていることがわかったからだ。
「有り難う」
「御礼はいいわ」
 ナタリーは俺が御礼を言うと照れ臭そうに笑ってくれた。
「ただ感想言ってくれただけだから」
「いや、歌詞までちゃんと聴いていてくれたから」
 俺はそれが嬉しくて仕方なかったからそれをまた述べた。
「それを有り難うって言いたいんだ」
「そうなの」
「それでよかったんだね」
「そうよ」
 それはまた微笑んで答えてくれた。
「とてもね。いい曲だったわ」
「それじゃあさ」
 俺はその言葉に気をよくしてまた新しい曲を彼女に伝えた。彼女はその曲も笑顔で聴いてくれた。


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