第一章
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自己紹介を聞いてそう言ってきた。
「ああ」
俺はそれに返した。
「ポップをな、やってるんだ」
「いいわね」
ナタリーはそれを聞いてその青い目を細めてくれたのを今でも覚えている。ブロンドとはっきりとした顔立ちが奇麗な女の子だった。
「ポップス好きなのよ、私」
「そうなんだ」
「ええ、とてもね」
そう言ってにこりと笑った。
「他にはロックとか」
「ロックもな」
俺は嫌いじゃなかった。
「やるせ。あとバラードも」
「意外と幅広いのね」
「歌なら何でもいいさ」
俺は彼女にそう言った。
「歌えればそれでいいんだ」
「そうなの」
「ああ」
俺は答えた。
「ガキの頃からそうだったんだ。ギターだって持ってるぜ」
ジュニアハイスクールの時にバイトで苦労してやっと買ったやつだ。俺の宝物だ。
「それでな。いつも練習しているんだ」
「じゃあさ」
ナタリーはそれを聞いて俺に声をかけてきた。
「今度そのギター聴かせて」
「いいのかい?」
俺はその言葉を聞いてまんざらでもなくなった。
「それで」
「ええ」
ナタリーはそれに答えた。
「是非。よかったら」
「ああ」
俺はその言葉に頷いた。
「じゃあ今度な。こっちに持って来ようか?」
「それだと重いでしょ」
けれどナタリーは俺の言葉にそう返してきた。
「だからね」
それでこう言ってきた。
「おうちで聞きたいわ」
「家っていうと」
俺はそれを聞いて考えた。家というとこの場合思いつくのは。
「俺の家で?」
「そうよ」
ナタリーはにこりと笑って俺に答えてきた。
「駄目かしら」
「いや」
何か話を聞いていて嘘のように思えた。
「俺は別にいいけれど」
「じゃあそれでいいじゃない」
何かやけにあけっぴろげだった。正直に言えばそのあけっぴろげなのが気に入った。けれどこの時はそれは言うことはなかった。
「今度の日曜日ね。それで」
「じゃあ日曜だな」
俺もその言葉に頷いた。
「その時」
「ええ。それでおうち何処なの?」
ナタリーは俺の家の住所を尋ねてきた。
「教えて。絶対に行くから」
「ああ、わかったよ」
俺はナタリーに住所を教えた。日曜日にナタリーを家に迎えた。それを聞いてお袋がくすくすと笑うのがやけに腹立たしかった。
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