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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 不可知
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は別な物です。それを理解していない」
別な物? 一体何処が違うのか……。

「彼らは綱紀粛正、財政再建をしましたがあくまでそれは体制内の改革です。体制そのものを強化しようとしたのであって変えようとしたわけではない。ですがブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯は貴族階級を抑え平民階級の権利を拡大しようとしている。政治体制そのものを変えようとしているんです。その意味が分かりますか?」
「……」

「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯はルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの作った政治体制を終わらせようとしているという事です」
ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの作った政治体制を終わらせる? 思わずホワイト中尉、バグダッシュと顔を見合わせた。二人とも驚愕を顔に浮かべている。

「それは、大袈裟なのでは……」
ホワイト中尉が声を上げると中将がフッと嗤った。
「ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの政治体制は支配階級を貴族として固定し確保する事でした、目的は衆愚政治を防ぐためです。帝国では貴族でなければ政治、軍の上層部には入れません。被支配者階級である平民には何の政治的権利も無い、彼らはただ税を納めるだけの存在です。ルドルフはその方が政治的な混乱は少ない、そう思ったのでしょう」

「しかし改革案を作ったであろうカール・ブラッケ、オイゲン・リヒターは貴族で有ったにもかかわらずフォンの称号を捨て平民になった。そして社会改革の必要性を訴え平民の権利の拡大を訴えてきた人達です。極端な事を言えば彼らは反体制派と言って良い」
「……」

「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯は彼らの改革案を受け入れ平民の権利を拡大しようとしている。理由は支配者階級としての貴族が役に立たなくなったからです、つまりルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの作った政治体制を否定しているのですよ、あの二人は。在野の人間ではない、政権中枢の人間がそう考えて行動している。終焉を迎えようとしているとはそういうことです」
“なるほど”という声が聞こえた。バグダッシュが頷いている。

「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯はそれを理解しているのでしょうか? 自分達がルドルフの作った政治体制を終わらせようとしていると、それを理解した上で改革を行おうとしているのでしょうか?」
ホワイト中尉が質問すると中将が頷いた。

「貴族達は誰も自分達が役立たずだとは思わない。しかし統治者の立場になってみれば分かる、貴族達が支配者として不適格だと……。帝国の統治体制はもう限界にきているんです。だからリヒテンラーデ侯はあんな事を考えた。ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯も同じ認識を持ったから改革を実行しようとしている。分かっていないのは貴族だけですよ、現状では軍も改革無しでは使い物にならな
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