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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 不可知
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いるんですよ、そうそう簡単に和平など結べません。和平を結ぶには相当な政治的力量が必要になります」
「……」
「残念ですがサンフォード最高評議会議長にはそんな力量は有りません、そうでは有りませんか?」
隣で失笑する音が聞こえた、バグダッシュが顔を歪めている。
「それに最近の同盟は勝利続きで政権は極めて安定している。サンフォード議長は無理をする事は無い、今のままで十分と思っているでしょう。地球教対策では帝国と協力するでしょうがそれが終わったらダラダラと戦争を続けるでしょうね」
サンフォード政権では和平は無理、ヴァレンシュタイン中将はそう見ている。
では国防委員長との繋がりは軍事に関するもの、そういう事だろうか……。どうもしっくりこない、共通の敵を作って協力体制を執らせたのは休戦、或いは和平のためではないのか……。しかし現状ではサンフォード政権が安定しているのも事実、トリューニヒト国防委員長は実力者だが最高評議会議長になるにはまだまだ時間がかかるだろう。
「では提督は和平については如何御考えでしょう」
俺が踏み込むと中将は俺をじっと見た。
「賛成しますよ、私は戦争が嫌いですから」
戦争が嫌い? 冗談かと思ったが相手はニコリともしない。困惑していると哀れむような視線を向けられた。
「中佐は戦場に出た事は有りますか?」
「いえ、小官は情報部一筋ですので」
いささか忸怩たる思いを抱いて答えると中将が頷いた。
「自分の考えた作戦で大勢の敵を殺す。用兵家としては立派なのでしょうが人間としてはクズですね。私は勝利を嬉しいと思った事は有りません。前線に出ない事を恥じる人もいますがその方が良いと思います。戦争なんて無い方が良いんですから……」
亡命者だからだろうか、殺しているのが帝国人だから素直に喜べない? それとも本心から戦争が嫌いなのか……。正直困惑した、ホワイト中尉も困惑を浮かべている。帝国で後方に居たのはそれが理由なのだろうか、だとするとヴァレンシュタイン中将にとって前線で戦うのは本意ではないのかもしれない……。
「どうも情報部は肝心な事が分かっていないようです。枝葉の部分にばかり気を取られている、困った事だ」
中将が俺とホワイト中尉を見ながら言った。嘲りではない、本心から俺達が肝心な部分を理解していないと思っているらしい。俺は何を分かっていないのだろう。何を見落としているのだろうか……。
「貴官達は帝国が行う改革の意味が分かっていない」
「一体何が分かっていないのでしょう?」
「フランツ・オットー大公、皇帝オトフリート二世、アウグスト一世、マクシミリアン・ヨーゼフ二世、帝国の歴史の中で何人か改革と言って良い政治を行った人物が居ます。しかし彼らとブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が行おうとしている改革
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