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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 不可知
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情をしている。中将がチラッと一瞬だがバグダッシュに視線を向けた。バグダッシュは何の反応も見せない。

「そんな事はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯も知っている事です。あの二人は貴族の中の貴族ですよ、誰よりも良く理解している。それでも改革を実施すると宣言した、そうしなければ帝国は持たない、そう判断したからです」
「しかし貴族達の反対は如何するつもりでしょう、一つ間違えば内乱という事にもなりかねないと調査課では見ているのですが……」

「さあ、何か手が有るのでしょうね」
「何か?」
ホワイト中尉が問い掛けるとヴァレンシュタイン中将がフッと嗤った。
「或いは内乱も覚悟したか……。あの二人を甘く見ない事です。思いの外に手強いし肚も座っている。少し予想外でしたね、もうちょっと馬鹿かと思っていたのですが……」

何処か楽しそうな表情だ、予想が外れたのが嬉しいのだろうか? どうもよく分からない。
「権力欲に取りつかれた馬鹿なら殺し合いをしている、臆病なら逃げ出す。あの二人が馬鹿か臆病なら帝国は二分、三分される可能性も有ったのですが踏み止まって協力して帝国を変えようとしている。あの二人は馬鹿ではない、それなりに覚悟も有れば成算も有るのでしょう」

「成算と言いますと?」
「……」
問い掛けたが無言でココアを飲んでいる。視線を俺に向ける事も無い。
「お答えいただけませんか、提督?」
俺を見た。
「知りたければ私にではなく直接ブラウンシュバイク公に問うのですね、もっとも教えてくれるかどうか……」
中将がクスクスと笑い出した。知っているのだろうか? 或いは想定しているのか? 何処かであしらわれている、そう思った。

ヴァレンシュタイン中将は改革が実施される、成功する可能性が高い、そう見ているようだ。何らかの情報を持っている可能性も有る、レムシャイド伯から聞いているのかもしれない。となると同盟と帝国の関係はどうなるのか、改革を進めれば帝国の国力は増大するだろう。改革を潰す方向で動くのか、それとも支援して友好関係を築くのか……。

それと気を付けなければならないのはブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯だ、中将はかなり高く評価している。それなりに能力が有ると見るべきだろう。彼らが一体何を考えるか、その動向を掴む事が必要になる……。ホワイト中尉が俺を見た、次の質問に移って良いか、そんなところだろう。頷く事で許可した。

「帝国と同盟は現在協力体制を執っています。ヴァレンシュタイン提督はこの状況が何時まで続くとお考えでしょうか、帝国との間に和平という事も有り得ると思われますか?」
ホワイト中尉が質問するとヴァレンシュタイン中将が苦笑を浮かべた。
「無理ですね」
にべもない口調だ。我々を見て嗤っている。

「百五十年も戦って
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