第12話:秋の到来・出会いの秋
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………
立ち振る舞いの作法で座り方の稽古なう。
「遠野、また座るときに片足を引いてるよ!もう一度!」
「はい!」
…立ち振る舞いの作法で立ち方の稽古なう。
「立ち方が違う、やり直し!」
「はい、もう一度お願いします」
…は、半東のけ、稽古中なう…。
「今日は半東(お茶を点てる人の補佐役)の稽古をするよ!しっかり見てるんだよっ!」
「よろしくお願いします!」
山口先輩のつける稽古は、運動部も顔負けの厳しいものだった。それに俺は、オフシーズンとはいえ水泳部も練習があったのでそちらも気を抜かず打ち込み、昼休みや授業の合間を縫ってこれらの厳しい稽古をこなしていた。この時期の俺は、授業中に意識がほとんど無かった。ほとんどは寝ているか、たまに保健室に行くという名目で茶道部に顔を出していたくらいである。それでもハードスケジュールを除けば、まるで新人研修の時に受けたビジネスマナー研修みたいだ、と俺は前世の入社したばかりの自分を思い出しながら結構楽しんでいた。ひたすら稽古の内容を反復し、先輩の注意を受けて適宜修正し、正しい振る舞い方を身につけていく。スキルアップのチャンスだと思えば、新人研修の何倍も厳しい稽古も楽しさが更に増した。
茶道部の稽古に水泳部の練習を黙々とこなして気がついたら、夏休みであった8月が終わり、さらに新学期が始まる9月もあっという間に過ぎてしまった。山口先輩の厳しい稽古の甲斐があってか、俺は他の部員以上に茶道における作法を習得することが出来た。むしろこの作法が日常生活レベルに浸透してしまったくらいで、水泳部部員からは、お前…何かお上品になってねえか?、と苦笑いを浮かべて言われる程である。知子や響も、お上品になった俺に対して何も言わないが苦笑いは隠せなかった。…せめて、レースに出るときまでにある程度修正しよう。
これは後で聞いた話だが、山口先輩は俺だけに厳しい稽古を課していた。他の部員では気が引けるようなものでも、俺なら出来ると踏んだからだそうだ。それに俺が掛け持ち部員ってことで贔屓を受ける、足手まといになったら、他の侵入部員に示しがつかないからってことも視野に入れていたらしい。若年ながらおぞましいリーダーシップ性よ。まあ、そのおかげで俺も今年度初の茶会では恥を掻かずに無事幕を下ろすことが出来たから、これで良かったのだろう。後片付けで、茶入れの種類を分けずに棚に入れてしまって先輩に怒られたのを除けば、この稽古もいい思い出である。
……
「あぁ、今日も終わった〜」
陸トレ上がりの心地よい疲
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