第12話:秋の到来・出会いの秋
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女性の雰囲気を醸す美人さんなのだが、内面は実は男よりも男らしく、人に有無を言わせないオーラを纏っていることを最近俺は思い出した。当初のおっとりとした姿は実は俺を誘うための擬態だったのかもしれない、原作の梨穂子ルートのプレイをもう少し綿密にするべきだった。それからだろうか、先輩が俺の前に近づいてオーラに中てられる度に『来たなプレッシャー!』という自分の心の中でボケを入れて気持ちの切り替えを行っている。俺の前に立った山口先輩は、胸の前で腕を組み不敵な笑みを浮かべる。
「聞いたわよ、遠野。あんた、県大会で決勝まで進んだそうね。さっきまでアンタらの県大会の話でこっちも盛り上がってたんだ。とりあえず、おめでとう」
「ありがとうございます」
酒の肴にされるのは好きではないのだが、労いの言葉を頂いているのだ、と俺は素直に感謝の意を述べる。でも、と山口先輩は逆接の接続詞をつけて話を続ける。ですよねー、と俺はこの展開を予想していたので、何らかのお叱りの言葉が来ることを覚悟する。これは、前世の部署で係長に呼ばれた時に編み出した俺流の心の予防線の張り方である。
「でも遠野、アンタが水泳部の期待の新人でも茶道部部員として贔屓はしないよ。水泳部はこれからオフシーズンに入るそうだし、むしろ、これからビッシビシ稽古をつけて、さっさと一人前になってもらうよっ!」
あら、お叱りじゃないの?と俺は心の中で予想外の展開に少し呆然としていた。でもまあ、叱られなければそれに越したことはない。それに茶道部員としても一生懸命やる、と山口先輩には誓ったのでその言葉は実行する上でこの展開はこちらの望むところだ。
「はい、分かりました。私も若輩ながら精一杯努めさせて頂きます。山口先輩、諸先輩方、同学年の皆さん。どうぞご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
と背筋をピンと伸ばし、山口先輩の目を見て答える。周囲は呆然としているようであった。何か拙い事でも口にしたかな、それとも敬語を間違えたかな、と心配が顔に出そうなのを俺は必死に堪えた。そんな俺を見て山口先輩はニカッと笑って、
「うん、いい返事だ!頼んだよ、茶道部の新入り君!」
と先輩は俺の肩をバンバン叩いて、後ろを向いて高笑いをしながら元いた場所に戻る。叩かれた肩を痛みを拡散させようと軽く擦りながら、俺は山口先輩の接し方が、県大会を最後に引退してしまった元・主将の姿と重なり、俺はひとり心の中で寂寥を感じていた。山口先輩から、茶道部員全員に対して今日のスケジュールと今週のスケジュールが報告される。今日は、来たるべきお茶会に向けてこの部屋の掃除をするそうで、重たい荷物の運搬・管理は俺がすることが内定していたようである。これって受難だよなぁ…
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