第11話:夏の残像
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えた主将を思い出し、引退された先輩方の姿を思い出し、俺は胸が痛くなり、誰もいないプールの中に身を沈めた。プールの中の青の光景が目にいっぱい広がる。叫ぶかわりに思いっきり息を吐く、苦しくなるまで吐く。吐き切り、身体が酸素を欲するようになり水面から顔を上げて大きく呼吸する。気は紛れたか、と自分に問いかけた。少なくともすっきりしたのは間違いない、という自分からの返答が身体を通じて分かった。
「…野ォー!遠野ォー!!」
校舎の方から俺の名前が呼ばれた気がして、校舎の方を人の影を探す。二人の女子生徒がおり、メガネを掛けた方が手を振りながら俺の名前を呼ぶ。夕月と飛羽、後ろにいるのは山口先輩か?取り合えず手を上げて、ベソを掻いていたのがばれない様に声の調子を整えて返答した。
「何だぁー!?」
「水泳部は今オフだろー!?ちょっくら茶道部を手伝ってくれないかって先輩が行っててさー!!」
そんな気分じゃないんだがな。とは言っても、そんなこと口に出せば後ろの山口先輩が恐いし…。気分転換にもなるし、やりましょうか。
「分かったー!!10分したら茶道室に行くから待ってくれ!!」
俺の夏は終わった。セミが鳴いていることと外で運動部が声を出していることが、季節としての夏が未だ続いていることを俺に伝えていた。それが俺の夏の残像を未だに見せ続けているのだった。
(次回へ続く)
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