TOKYO CONNECTION
[5/6]
[1]次 [9]前 最後 最初
好かれないわよ」
「浮気者よりましでしょ。僕は浮気はしないよ」
「どうかしら」
それを聞いてまた笑った。実はこれは嘘だ。俺も人並みに浮気をする。先週は別の女の子と会っていた。だがそれを彼女に言う必要もないので黙っているだけだ。だから本当は彼女が浮気をしていても嫉妬してはならないのだ。さっきの嫉妬は俺の我が儘だ。
「本当のところはわからないわよね」
「きつい御言葉」
「うふふ」
そんな話をしながら俺達は酒と料理を楽しんだ。夜が更ける頃になると雨も止んできた。
「止んだわね」
「そうみたいだね」
俺も窓を見ていた。そして話を続けていた。そこで酒も飲み終えた。気がつけば俺達はそれぞれボトルを二本あけていた。我ながら飲んだもんだ。
「出る?」
彼女はそこで俺に尋ねてきた。
「出ますか」
俺もそれに同意した。金は俺が払い店を出た。
「これからだけれど」
「御免なさい」
「えっ!?」
その言葉に戸惑った瞬間だった。俺の口は彼女に塞がれた。
彼女の唇が俺の言葉を遮ったのだ。そして俺は言いかけた言葉を喉の奥に戻された。
「それじゃあね」
「えっ!?」
唇が離れた後でも俺は少し戸惑っていた。
「それ、どういうこと?」
「ちょっと事情が変わっちゃって。ここでお別れしたいの」
「何かあったの」
「野暮用でね」
実は何もないことはわかっていた。だが俺も酔っていたこともありそれでいいとふと思った。酒と唇の魔力にやられてしまったみたいだ。
「今日は悪いけれど勘弁してね。また今度」
「う、うん」
かなり我が儘な話だと思ったがそれを認めた。俺は背を向ける彼女に対して声を送った。
「気が向いたらお邪魔するから。日曜にでも。それでいいかしら」
「いいよ、別に」
「悪いわね。無理言って」
「別にいいよ」
俺はそう言って笑った。どうせ約束なんてこの街じゃ大した価値もない。それ以上に真剣な恋愛なんて何の価値もない。ただ一時の夢に過ぎないものかも知れない。それは俺がこの街に来てから最もわかったことだった。そうした意味で俺は完全にこの街の住人になっていた。
「じゃあまた今度」
「今度って何時?来週?」
「さあ」
彼女はここでまら悪戯っぽく笑った。
「今日かもしれないし明日かもしれないわ」
「矛盾してるじゃない、それじゃあ」
「そんなものよ、人間なんて」
彼女の笑みは悪戯っぽいもののままであった。そのまま言葉を続ける。
「何時何が起こるかわからないもの」
「急に哲学的なことを言うね」
「私哲学科出身だもの」
「嘘」
それを聞いて少し酔いが醒めた。悪いジョークにしか聞こえなかったからだ。まさ
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ