第41話 「変わりゆく人々」
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鼻に掛け、平民を見下す事は許されぬ。そうじゃ、ルードヴィヒだけでなく、帝国そのものが許さぬ」
「では、我らはどのようになるべきなのでしょうかっ!!」
「分からぬ。予には分からぬのだ」
フレーゲル男爵が、叫びにも似た口調で陛下に迫りました。
普通なら不敬と取られるだろう態度ですが、その必死な面持ちであるために、私もラインハルト様も何もいえませんでした。
「ただ……克己心が試されるであろう。そして自己を律する事が重要になる。我が侭放題ではいかぬじゃろうな」
「自律、自主、自立か」
「ラインハルト様?」
ラインハルト様が呟きました。
それは同盟のアーレ・ハイネセンが説いたという、同盟の精神では?
「ラインハルトの言う通りかも知れぬ」
陛下が深く頷きます。
ですが、言うは易く。行なうは難しです。
「そうかもしれない。だけど、見本はある」
「誰だ?」
陛下がラインハルト様に問いかけました。
「ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム」
「ルードヴィヒか!」
「皇太子殿下!」
陛下と男爵が異口同音に口にしました。
驚愕に彩られた声です。ですが、ラインハルト様は、どこか誇らしげな声でした。
そうです。ラインハルト様にとって皇太子殿下は、兄のようなもの。普段はあれやこれやと反発しても、仲の良い、好きな兄なのです。
「口調を改めさえすれば、確かに見本となる。口調さえ改めれば!」
ラインハルト様が口を尖らせて言いました。
素直に認めるのが悔しいのでしょうか? 素直じゃありませんね。
だけど、皇太子殿下は冷静で、我慢強く、先に先にと考えています。公務は厳格でありながら、私生活は寛容。そして鷹揚でもあります。
一言で言えば、強い人です。
精神的にも肉体的にも。その在り様が強さを感じさせる。
確かに新しい帝国に、ふさわしい貴族像と言えそうでありますね。
「そうか……ルードヴィヒか……」
陛下の口調もどこか誇らしげです。
ご自分の息子が見本となりえるのは、嬉しいのでしょう。
陛下との謁見が終わり、私達は薔薇園から立ち去ります。
ノイエ・サンスーシの廊下を並んで歩いていると、不意にフレーゲル男爵が、口を開きました。
「私は新しい帝国にふさわしい貴族になるぞ」
ラインハルト様に向かって話しかけたようにも、自分自身に言い聞かせているようにも見える。
「簡単ではなかろうが、生涯を賭けて成し遂げてみせる」
フレーゲル男爵が持つ、強烈な貴族としての自負心が、向かうべき方向を見定めたようです。
「ぜひ、そうなって欲しい」
「無論だ」
ラインハルト様の言葉に男爵が深く頷きました。
新しい帝国にふさ
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